マンションや共同住宅での暮らしというと「ご近所付き合いが煩わしい」と感じる方が多いようです。しかし昨今では、住人の高齢化や震災などの影響で、コミュニティの大切さが見直されています。共同生活の中で挨拶が気持ちよく交わされる関係。そして、いざというときに頼れる専門家がいる。そんな新しい暮らしのかたちが求められています。

理事も損害賠償リスクや個人情報流出事故に備え保険加入が当たり前?

理事が理事会活動などに関して関係者から訴えられた場合に金銭的な負担を補償する、「マンション管理組合役員向けの賠償保険」があるのをご存知でしょうか?

マンション管理組合役員向け賠償保険とは?

マンション管理組合役員向け賠償保険

<画像は日新火災・マンションドクター火災保険パンフレットより>

これまで、大手の管理会社などが提供する管理組合の役員向けの保険はらあったのですが、それとは異なり、共用分の火災保険の特約として提供する保険商品が複数でてきました。分譲マンションで加入する共用部分の火災保険や施設賠償保険とは違い、管理組合の役員個人の損害賠償リスクや、個人情報漏えい事故に対する事前の備えとしての保険です。

この保険費用は、役員が負担するわけではなく、管理組合の管理費からの支出になります。

管理組合役員向けの保険が増えてきた背景

区分所有者の高齢化や築年数が経過したマンション増えた上に、マンションの高層化などによって、管理業務が複雑化して業務の専門性も必要となっています。しかしながら、分譲マンションの管理組合役員は 1~2 年交代で就任することが多く、必ずしもマンション管理の実務に明るいとは限りません。

保険が必要になった背景

保険が必要になった背景

  • 管理業務も年々複雑化している
  • 理事の管理に対する知識の不足

例えば、誤って居住者の個人情報を開示してしまい、トラブルから訴訟に発展したり、マンションの修繕費用が「適正な支出額を超えている」として居住者から損害賠償請求をされるなど、理事としての活動をおこなう中で、想定外の経済的損失を被る可能性があります。

管理組合の役員のリスク

管理組合の役員のリスク

  • 修繕費用が高額だと損害賠償請求されるリスク
  • 個人情報漏洩によるトラブルによる訴訟のリスク

このように、理事会活動の中で、理事長や理事会が訴えられるリスクが存在しています。この訴訟に対する役員の金銭的な負担をカバーするための保険が「マンション管理組合役員向けの賠償責任保険」です。また、こうしたリスクを恐れ、理事長をやりたくないといった声も聞かれるようになってきました。

個人情報保護法(2016年3月改正)では、マンション管理組合が「個人情報取扱事業者」の対象に追加され、新たに規制されることになりました。

想定される補償の対象

  • Aマンションの会計担当理事が修繕積立金を横領。理事長と監事がその横領に気づかなかったことに対して監督責任を問われた。理事長と監事は管理組合から提訴され、損害賠償金の支払いを命じられた。
  • 理事長が所有するパソコンがウイルスに感染し、搭載していた入居者名簿が流出してしまった。入居者宛にダイレクトメールが届くなどの被害があり、対応費用が発生した。

<あいおいニッセイ同和損保HPより>

  • 預金通帳の残高を確認していなかったため、会計担当役員の着服に気付かなかったとして理事長と監事も弁済を求められた。
  • 総会で、議案の決議をめぐって言い争いになり、理事が住人から名誉棄損として慰謝料を請求された。
  • 管理費を支出した際、その金額が多大であるとして、理事長が住人からその一部を返還するように請求された。
  • 副理事長が組合員名簿を誤って漏えいさせてしまい、プライバシーを侵害されたとして住人から訴訟を起こされた。

<日新火災海上保険HPより>

総括

実際には、管理組合役員が理事会の活動などに関して、関係者から損害賠償請求をされて、支払いに至ったケースはあまりないようです。

しかし、こうした役員向けの賠償保険があることで、理事が精神的に安心して理事会の業務ができるようになるのであれば、理事のなり手不足解消の一助になるでしょう。

マンションの役員は、基本的にボランティアでの活動ですので、管理組合がこうした保険に加入して管理費から支出(費用も年間で数万円程度とのこと)があっても、役員の金銭的なリスクを解消するということは理解を得られる仕組みだと考えられます。