不適切コンサルだらけの時代に見直される責任施工方式による大規模修繕工事

大規模修繕工事の責任施工方式とは管理組合向け
編集部

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分譲マンションでおこなわれる大規模修繕工事は、設計コンサルタント会社を採用する設計監理方式が主流となっています。しかし、昨今では本来、中立公正な筈の設計コンサルタント会社の中には施工業者からのバックマージンを目当てにした不適切な企業が数多く含まれていることが判明しました。本来大規模修繕工事の透明性をメリットに掲げてきた設計監理方式ですが設計コンサルタント会社の不正を受けて、設計コンサルの介在しない、設計・施工を一社に任せる「責任施工方式」も見直されています。今回は、設計監理方式の問題点を中心に各方式のメリット・デメリットを考えていきます。

設計監理方式の問題点/コンサルタントは不正をしない?

設計監理方式が優れている方式であるのは設計コンサルが中立公正であるのが大前提ですので、国土交通省が、設計コンサルタントと施工業者の癒着やバックマージンに対する警鐘をならすなど、その信頼がなくなった以上はたして「設計監理方式」が管理組合にとって正しい方式であるか疑問符がついています。

国土交通省からの設計コンサルタントについての通知

<現状の課題>
マンションの大規模修繕工事等において、診断、設計、工事監理等を担う設計コンサルタントが技術資料を作成し、管理組合の意思決定をサポートする、いわゆる「設計監理方式」は、適切な情報を基に透明な形で施工業者の選定を進めていくためにも有効であるとされています。しかしながら、別紙1の通り、発注者たる管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在が指摘されています。

参照 設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について

■ 不適切コンサルの事例(別紙1から抜粋)

不適切コンサル・指摘されている事例1
最も安価な見積金額を提示したコンサルタントに業務を依頼したが、実際に調査診断・設計等を行っていたのは同コンサルタントの職員ではなく、施工業者の社員であったことが発覚した。コンサルタント(実際には施工業者の社員)の施工業者選定支援により同施工業者が内定していたが、発覚が契約前だったため、契約は見送られた。なお、同コンサルタントのパンフレットには技術者が多数所属していると書かれていたが、実質的には技術者でない社長と事務員一人だけの会社であった。
不適切コンサル・指摘されている事例2
設計会社が、施工業者の候補5社のうち特定の1社の見積金額が低くなるよう、同社にだけ少ない数量の工事内容を伝え、当該1社が施工業者として内定したが、契約前に当該事実が発覚したため、管理組合が同設計会社に説明を求めると、当該設計会社は業務の辞退を申し出た。このため、別の設計事務所と契約し直したところ、辞退した設計会社の作成していた工事項目や仕様書に多数の問題点が発覚し、全ての書類を作り直すこととなった。
不適切コンサル・指摘されている事例3
一部のコンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工業者が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導するため、格安のコンサルタント料金で受託し、結果として、管理組合に経済的な損失を及ぼす事態が発生している。
設計コンサルタントの不正がこれだけはびこると、正直なところ、これなら日常管理を依頼している管理会社に大規模修繕工事を依頼するのもひとつの候補として検討するのも選択肢としてあり得ます。マンション管理会社に大規模修繕工事を依頼することは、金額が割高になるリスクはあっても、長期的に日常管理を依頼している以上、その施工品質についてはある程度担保され、マンションのことをよく理解している管理会社であれば理事の負担も最小限に抑えられるからです。

「設計監理方式」のデメリット

不適切コンサルの問題とは別に設計管理法式の「設計」と「施工」を別の業者に依頼することによるデメリットは他にもあります。現在主流になっている「設計監理方式」は一見、管理組合にとってメリットが多いように思えますが、以下のような問題点が指摘されています。

1)設計費用が別途発生する

設計監理方式では、設計事務所等への費用負担が工事会社への支払いとは別に発生します。設計事務所等への支払いは主に、診断、設計、施工監理に発生し、費用相場は、大規模修繕工事の総費用に対して10%前後となっています。

2)施工業者のバックマージンの問題

もともとマンションの大規模修繕工事における設計監理方式は、高額で不透明な大規模修繕工事の解決策として主流となった経緯にもかかわらず、現在では設計コンサルが施工業者からバックマージンをもらうなどの不正行為が行われ、結果として管理組合が不利益を被っています。国土交通省が、設計コンサルタントと施工業者の癒着やバックマージンに対する警鐘をならしています。

3)責任の所在が不明瞭である

仮に、工事結果に瑕疵があったとして「設計コンサル会社」と「施工業者」との癒着や馴れ合いから、互いがかばいあって責任の所在がはっきりしないケースがあります。

4)「設計コンサル」が設計をおこなう必然性がうすい

エントランスのデザインを大きく変更するといった工事であれば、設計コンサルが介在することは理解ができますが、経年劣化による修繕をおこなうにあたって必ずしも大掛かりな設計をする必要性はありません。

5)工事監理の必要性がうすれてきた

大規模修繕工事の瑕疵保険の付保が一般的になりましたので、第三者による工事監理は必ずしも必須ではなくなりました。

6)理事や修繕委員の負担が重すぎる

設計監理方式ではその仕組か「設計コンサルタントの選定」や「公募による施工業者の選定」など、そのつど理事会や説明会、総会の開催などが必要になり、管理組合に大きな負担が掛かります。

7)共通見積書にも過信は禁物

設計事務所の大きな役割としてあげられているのが、複数の施工業者を選ぶ際の共通見積書の作成です。
複数の施工業者から見積りをとる場合、各社が異なる項目で工事内訳を表示すると、金額の比較をすることが困難です。そこで共通仕様書を作成しますが、見積りを依頼された施工業者は、共通仕様書の中に不必要な工事項目が含まれていても、それを訂正することが困難です。また設計コンサルにしてみれば、工事の範囲を広げて施工費用が高くなるほど、施工費用の何割といった自社の取り分が増えますので、不必要な修繕項目を共通仕様書に含めるケースも見受けられます。結果として、共通仕様書をつくることがかえって見積り費用を高くする結果を招きます。

「責任施工方式」のメリット

「責任施工方式」は、「設計監理方式」のように設計と施工をおこなう業者を分けず、ひとつの業者に診断・設計・工事を任せる方式です。責任施工方式の依頼先としては、日常管理を依頼している管理会社の他、大規模修繕工事を専門とした業者が一般的です。

設計監理方式と違って、設計と施工を同じ会社が行うためチェック機能が働かないため、修繕項目の見落としや施工不良など施工品質が落ちるケースもあります。しかし、責任施工方式では「設計・施工」をひとつの業者に任せられるため、信頼できる業者に発注をすれば、無駄のない一貫した工事計画のもと管理組合の労力が少なく、そして責任の所在が明確ですので安心して工事をすすめることができます。

また、費用面においても設計コンサル会社への支払いがありませんので、その分安価に抑えられるメリットがあります。いずれにしても、「責任施工方式」においては、信頼できる業者をみつけることがもっとも重要なことになります。

この記事のまとめ

もともと分譲マンションでの大規模修繕工事は、管理会社に任せるのが一般的でしたが管理会社が手配した下請けの施工業者により工事費用が割高になる傾向がありました。そこで現在では、診断、設計、監理は設計コンサル会社が行い、工事は別の施工業者が担当する「設計監理方式」が主流となりました。

現在では、設計・監理は設計コンサルタントが行い、工事は別の施工業者が担当する設計監理方式が一般的となっています。しかし、国土交通省が、設計コンサルタントと施工業者の癒着やバックマージンに対する警鐘をならしたように設計コンサルの不正が問題となっています。

実際に施工業者から話を伺うと、昨今の大規模修繕工事では、バックマージンを要求する設計コンサルや設計事務所が多数あり、昨今の大規模修繕工事では、こうした不適切な行為をしない設計事務所をさがすのは困難になっています。

理事会や修繕委員会としても、施工業者と癒着のない適切なコンサルタントさがしの手間がかかった上に、重ねて入札等を経て施工業者を選ぶ際にも不正がおこなわれていないかチェックが必要になっています。しらがって必ずしも設計監理方式で設計事務所等のコンサルタントを導入したからといって、理事の手間暇がなくなるわけではありません。

こうした中、実は昨今ではあまり採用されなくなった「責任施工方式」にも数多くのメリットがありますので、大規模修繕工事の実施においては現在主流の「設計監理方式」と決めつけないで責任施工方式も検討してはいかがでしょうか。

ただし、競争原理を働かすために管理会社以外の選択肢(責任施工方式の依頼先)もあげて、相見積りを取得するなどの理事会や修繕委員会の努力は必要となります。