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第三者管理方式とは国交省お墨付きの理事をやらなくてよい管理者方式

管理組合向け
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マンション管理については、これまでは自治という観点を重視して区分所有者による理事会が中心となっておこなっていくという考え方が主流でした。しかし昨今では居住者の高齢化や住戸の賃貸化など区分所有者による理事会運営自体が困難となるケースが増えてきました。そこで管理組合の運営を組合員以外の第三者の専門家がおこなう方式が採用されるケースが増えてきました。今回は「第三者管理方式」について考えていきます。

マンション管理組合の第三者管理方式とは


「第三者管理方式(管理者方式)」を簡単に説明すると、管理組合運営を「管理会社」や「マンション管理士」などの第三者に委ねることです。
マンション管理の専門家であるマンション管理士等が理事長(役員)に就任して、役員の不足を補うほか専門家によるプロフェッショナルな管理組合運営をおこなう方式です。
この方式では、これまでの区分所有者による理事会運営方式とは異なり、マンション管理士等の専門家が理事長(管理者)や役員に就任するほか、理事会の開催回数を削減もしくは、理事会そのものを廃止することで、理事のなり手がいない問題を根本的に解消することが可能です。

管理組合で第三者管理方式が必要となった理由

これまでの組合員による理事会制度を基本とした管理組合運営仕組みは、現実問題としてあまり上手く機能していない管理組合が多くなってきています。以下に、マンション管理組合で第三者管理方式(管理者管理方式)が必要となった理由について記載します。

理由1│標準管理規約が改正された

これまで国土交通省が作成したマンション管理組合における管理規約の雛形である「標準管理規約」では、自治という観点を重視して区分所有者で構成される理事会が中心となって管理をおこなうことを前提としてきました。
これが「居住者の高齢化」や「賃貸化」などによる理事のなり手不足を背景として、平成23年の標準管理規約改正において、理事の要件について「居住している区分所有者に限定」が撤廃されました。
そして、平成28年の改正では理事に専門家が就任することを前提とした「外部専門家を役員として選任できることとする場合」という条文が追加されました。

標準管理規約における外部専門家の役員就任に係る規定

標準管理規約(役員)
第35条 管理組合に次の役員を置く。
<外部専門家を役員として選任できることとする場合>
2 理事及び監事は、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。
4 組合員以外の者から理事又は監事を選任する場合の選任方法については細則で定める。

【コメント】第35条関係
① 管理組合は、建物、敷地等の管理を行うために区分所有者全員で構成される団体であることを踏まえ、役員の資格要件を、当該マンションへの居住の有無に関わりなく区分所有者であるという点に着目して、「組合員」としているが、全般関係③で示したとおり、必要に応じて、マンション管理に係る専門知識を有する外部の専門家の選任も可能とするように当該要件を外すことも考えられる。この場合においては、「外部専門家を役員として選任できることとする場合」の第4項のように、選任方法について細則で定める旨の規定を置くことが考えられる。(略)
⑤ 第4項の選任方法に関する細則の内容としては、選任の対象となる外部の専門家の要件や選任の具体的な手続等を想定している。なお、⑥及び第36条の2関係②について併せて参照のこと。

理由2│高齢化と無関心層の増加

高経年マンションが増え区分所有者の高齢化も進んで、理事の担い手不足が深刻になってきていることや、管理に関して無関心な層が増えてています。今後、マンション住人の高齢化はさらに進み、こうした傾向が一層顕著になるものと考えられます。

高齢化問題はマンション管理組合が早急に組むべき課題|理事会運営
マンションの築年数の経過とともに、そこに住まう居住者の方も高齢化していきます。これまでの区分所有者による管理組合運営では限界もあり、今後は専門家による第三者管理・管理者管理も一般的になっていくでしょう。

理由3│投資用マンションが増えた

そもそも投資目的のワンルームマンションやリゾートマンションの場合は、オーナーがマンションから離れた場所に住んでいる場合が多く、管理組合の役員(理事)に就任をすることが困難です。また、投資用マンショのオーナーは経済的な観点でマンション管理を考えるので、専門家による理事会運営を望むケースが多くでしょう。

理由4│面倒な事はやりたくないという本音

マンションの住人側から考えれば、普段は別に仕事を抱えていているのに、たまの休日に理事会の活動に時間を割いている余裕はありません。組合員が理事をボランティアでおこなうという考え方から、費用を支払っても専門家に任せるべきだという考え方が広まってきました。

第三者管理方式の3つのパターン


第三者管理方式(管理者方式)は、理事会を完全に廃止する方法や、理事会を残したまま外部の専門家が理事長に就任する方法など、いくつかのパターンが想定されています。パターン1,2では、理事会は残すので、これまでどおり区分所有者による理事(役員)の制度は引き続き残ります。

パターン1│理事・監事外部専門家型又は理事長外部専門家型役員

(理事長、副理事長、理事又は監事等)にマンション管理士等の外部の専門家が就任する方法。専門家は理事会のメンバーとなり、区分所有者である他の役員と共に管理組合の運営をおこなう。

パターン2│外部管理者理事会監督型

マンション管理士等の専門家が管理者となり、理事会は監事的立場とする方法。監視する立場の理事会の役員に、さらに別の外部専門家を選任することも考えられる。

パターン3│外部管理者総会監督型

理事会を廃止して、マンション管理士等の専門家が管理者として就任する方法。区分所有者からは監事を選任して監視、もしくは監査法人等の外部監査を義務づける。パターン3の「外部管理者総会監督型」では、理事会そのものがなくなりますので、区分所有者が理事となる必要はなくなります。

第三者管理方式3パターンの比較

パターン1パターン2パターン3
理事会あり理事会あり理事会なし
管理者=理事長管理者≠理事長理事長がいない
  • 外部専門家は「役員」
    (理事又は監事)に就任
  • 外部専門家は役員ではない
  • 外部専門家は「管理者」に就任
  • 外部専門家は役員ではない
  • 外部専門家は「管理者」に就任
理事・監事外部専門家型
又は理事長外部専門家型
外部管理者理事会監督型外部管理者総会監督型

<標準管理規約「別添1」で示された外部専門家活用の主要3パターン>

第三者管理を必要としているマンションの例

第三者管理方式(管理者管理方式)の検討が必要なマンションは以下の通りです。

第三者管理方式が必要なマンションの例

理事のなり手がいないマンション
居住者の高齢化や賃貸化などの理由で理事のなり手がみつからない。
役員のなり手が固定化されているマンション
理事のなり手不足が原因で、役員が固定化されており一部の方に負担がかかっている。
無関心化がすすむマンション
理事のなり手がいないだけではなく、理事会や総会を開催しても出席者がほとんどいない。
管理不全が深刻なマンション
築年数が経過して修繕や資金計画等の問題が顕著化したが改善が困難となっている。

第三者管理方式のメリット・デメリット

メリット│第三者管理方式

第三者管理方式の最大のメリットは、理事の負担が減る、もしくはまったく理事になる必要がなくなるなど、区分所有者の管理組合運営にかかる負担が減ることです。そして、マンション管理のプロが管理組合運営をおこなうので、これまでよりレベルの高い運営が期待できます。
また、これまでの区分所有者による理事会方式と比較すると、マンションの修繕工事の立案といった諸問題が、第三者管理者の意思決定を中心におこなわれます。当然高額な修繕工事などは総会の決議を経ることに変わりはありませんが、これまでの合議制の理事会運営方式に比べて格段にスムーズな管理組合運営がおこなわれるようになるでしょう。

  • 管理組合員の負担軽減
  • 専門的による管理組合運営の適正化
  • 意思決定の迅速化

デメリット│第三者管理方式

最大のデメリットは、第三者管理者となる専門家への報酬による費用負担が追加されることです。また、就任した第三者管理者が自分の利益を考え、組合員が望まないような管理組合運営がおこなわれたり、そもそも自分たちの住まいの管理を第三者に委ねることについて区分所有者全員の合意を得るのが難しいといったデメリットがあります。

  • 外部専門家への報酬の支払いに伴う支出増
  • 区分所有者が望まない管理方針がとられる恐れ
  • 導入までの合意形成が困難

補足│外部の専門家が理事長になったときは監査機能を強化する

「第三者管理方式」を採用した場合には、外部の専門家が業務を適切に実施しているかを監査する体制の整備が重要です。理事会に理事長を監視する役割をもたせる方法や、監事を複数名に増員して監視を強化する、または、監査業務を会計士などの外部の第三者に委託する方法も有効です。

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補足│第三者管理者に管理会社が就任する場合の注意点

「投資型」や「リゾート」マンション等では、分譲当初よりマンションの管理会社が理事長や管理者に就任しているケースがあります。また、昨今では、日常管理をおこなっている管理会社が自ら理事長になることを提案するケースもあります。日常管理を委託している管理会社が、理事長や管理者になる場合には、区分所有者の利益とマンション管理会社としての企業収益の追求とは、立場や目的が違いますので利益相反の観点から十分な注意が必要です。
例えば、理事長に就任した管理会社が必要のない工事を自社でおこなうといったことに気をつけなければなりません。利益相反取引が起きないような仕組みや監視体制を構築する必要があります。

この記事のまとめ

「第三者管理方式」のメリットは、なんといっても理事のなり手がいない問題の抜本的な解消です。次にマンションの修繕工事の立案といった諸問題が、専門家によって進められるので組合員による理事会方式に比べて格段にスムーズに行われることでしょう。マンション管理のプロが管理組合運営をおこなうことで、これまでよりレベルの高い管理組合運営が期待できます。
反対に「第三者管理方式」のデメリットは、専門家による管理者が暴走して組合員が望まないような運営がおこなわれる恐れがあります。
また、これまでの理事会を主体とした管理のやり方からの意識改革ができるのかという心理的な課題もあります。しかし、区分所有者の高齢化が深刻で管理不全となっている管理組合ではこれまでの考え方を変えていかざるを得ない状況になっています。
今後、「住人の高齢化」や「建物の老朽化」は避けられない状況の中で第三者管理者方式のニーズは増えています。
これまでの外部の専門家を「顧問」や「コンサルタント」して活用することから、さらに進んで、専門家が管理者になる「第三者管理方式」を採用するマンションも増えてきました。
既に「リゾート」「投資用」マンションでは一般的になっている「第三者管理方式」は、今後はファミリー向けのマンションにも普及が進んで一般的な方式になっていくでしょう。
しかし、マンション管理士など専門家を管理者とする「第三者管理方式」を採用しても、最終的な決定は管理組合の区分所有者の責任だということに変わりはありません。
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第三者管理方式による不正や横領行為を防ぐには管理会社の役割が重要
平成13年8月1日に施行された「マンション管理の適正化の推進に関する法律」は、住民の皆様の意識の変化やニーズの高まりに応えて、マンションの資産価値を守り、快適な住環境が確保できるようにとの目的から定められた法律です。

 

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