マンションや共同住宅での暮らしというと「ご近所付き合いが煩わしい」と感じる方が多いようです。しかし昨今では、住人の高齢化や震災などの影響で、コミュニティの大切さが見直されています。共同生活の中で挨拶が気持ちよく交わされる関係。そして、いざというときに頼れる専門家がいる。そんな新しい暮らしのかたちが求められています。

第三者管理方式による不正や横領行為を防ぐには管理会社の役割が重要

多くの分譲マンションでは、管理会社が管理組合から委託を受けて出納業務を行っていますが、理事長などの役員による管理費や修繕積立金の横領事件等が発生しています。理事長には区分所有者や外部の専門家が就任しますが、誰が理事長になっても横領事件を防ぐポイントは、管理費や修繕積立金を収納する「口座の印鑑」と「通帳」を、理事長と管理会社に分別して管理することです。

マンションの横領事件の犯人は誰?

マンション管理組合の横領事件は、管理会社の担当者や管理員によるものや、理事長が関与するものなど様々な犯人がいますが、こうした被害が発生する背景としては、「管理会社に出納業務を委託しているマンション」と「自主管理マンション」とでは大きく違います。ここでは、管理会社に業務を委託している大多数のマンションにおける横領事件をおこさない方法について考えてみます。

管理組合の管理費・修繕積立金のながれ

管理費や修繕積立金は、各区分所有者から口座振替で管理組合の口座に収納されるのが一般的です。こうした出納業務は管理を委託したマンション管理会社が行いますが、管理会社は「マンション管理の適正化の推進に関する法律」「マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則」によりマンション管理組合の財産の保管方法は3つに制限されています。

イ、ロ、ハ方式と名付けられている3つの方式の内どれを採用するのかは、管理組合で選択するというよりは基本的に管理を委託しているマンション管理会社の会計業務の効率性などの事情により決められています。

イロハ方式の(イ)の方式


イロハ方式、それぞれに特徴があって、それぞれに不正などの事故がおきないようにするための注意事項がありますが、ここでは大手の管理会社が一番多く採用している(イ)の方式について説明します。
(イ)の方式では、各区分所有者から徴収した管理費と修繕積立金を収納口座へ一時的に納め、日常的な管理に要する費用を支出します。その後収納口座の残額を翌月末日までに保管口座へ資金移動します。

印鑑の保管

収納口座 ーー 印鑑・管理会社 / 通帳・管理会社※
保管口座 ーー 印鑑・理事長  / 通帳・管理会社
収納口座については、管理会社による日常的な管理にかかる支出の効率性に配慮して、管理会社が通帳と印鑑等を同時に保管してもよいことになっています。一方で保管口座については、管理会社は印鑑やキャッシュ・カードを保管することはできません。
※収納口座は、印鑑と通帳を管理会社が保管します。いってみれば自由に管理会社が出金できることになりますが、管理会社には、管理費と修繕積立金の合計額の1ケ月分以上を保証する保証契約の締結が義務付けられています。

補足│横領や不正を防ぐための注意点

前出のとおり、(イ)の方式で管理組合の資金を適正に運用しているマンションでは、抜け道はあるにしても基本的に「管理会社の担当者」と「理事長」が共謀しなければ、管理組合の管理費や修繕積立金を不正に引き出すことは困難です。これは区分所有者でも、区分所有者以外の外部の専門家が理事長になる場合にも当てはまる事項です。
横領を防ぐ基本的な事項

当然ながら(イ)の方式がただしく運用されなければ意味がありませんので、(イ)の方式を正しく運用するための基本事項

  • 管理組合が管理すべき保管口座の印鑑等と、同口座通帳の双方を管理会社に管理させていはいけない
  • 管理組合が管理すべき管理組合名義の収納口座の印鑑等と、同口座通帳の双方を管理会社に管理させてはならない
理事長と管理会社の不正や横領を防ぐ
  • 理事長は、管理会社に管理委託契約の目的に該当しない金銭の払出しを承認してはならない
  • 管理会社の担当者と理事長が共謀して管理費等を横領しないように注意する

総括

このようにマンション管理会社に業務を委託している管理組合では、法令に従い印鑑と通帳を正しく分別し、保管・管理して運用していれば、ある程度、管理組合の財産の毀損リスクを回避することはできるでしょう。ポイントは、管理会社と理事長、そして監事等がお互いに監視し合う仕組みです。

マンション管理会社に管理を委託しているマンションにおいては、管理会社の職員と理事長が共謀しなければ、管理組合の口座から不正に預金を引き出すことは基本的に困難ですので、マンション管理士等の外部の専門家が理事長に就任する場合には、信頼できる管理会社に出納業務を委託していることが前提になるでしょう。

また、管理組合の費用負担は増えますが、外部監査の仕組みを導入することで、さらに管理組合の財産を安全に守ることができます。

なお、ここでは触れませんでしたが、自主管理マンションの場合には、管理会社がいないため、理事会で印鑑と通帳を同時に保管することになります。よって、理事長と監事が別々に持つなどのルールをさだめることが大切です。