UPDATE|普通決議・特別決議・建替え決議の使い分けと2026年施行の改正
「管理会社の変更は普通決議?特別決議?」「大規模修繕は何分の何以上?」「2026年施行の改正区分所有法で何が変わった?」──総会の決議要件をめぐる実務上の疑問に、普通決議・特別決議・建替え決議の使い分け、議案別の判断基準、2026年施行の改正区分所有法による決議要件の見直しまで、理事会向けに整理します。
マンション管理組合の総会では、議案を議決する際に重要度に応じて決議要件が異なります。一般的な議題は、標準管理規約ベースでは出席組合員の議決権の過半数で決する「普通決議」で扱われます。
管理規約改正や、共用部分の形状・効用の著しい変更を伴う工事などの重要議題は「特別決議」、建替えは5分の4以上の賛成が必要という三段階の仕組みです。決議要件を誤ると決議そのものが無効となるため、議案ごとの正しい判断が不可欠です。
本記事では、普通決議と特別決議の違い、議案別の決議要件、2026年施行の改正区分所有法による見直し、実務での注意点まで、実務者向けに整理して解説します。
こんな方におすすめの記事です
- 総会議案ごとの決議要件を確認したい新任理事長
- 規約改正・大規模修繕を控えている管理組合
- 2026年施行の改正区分所有法の影響を把握したい理事会
- 決議要件をめぐって管理会社と認識齟齬のあるマンション管理士
総会決議の3つの区分|普通決議・特別決議・建替え決議
区分所有法は、総会決議を重要度に応じて3段階に区分しています。議案がどの区分に該当するかで、必要な賛成数が大きく変わります。
| 決議区分 | 必要な賛成数 | 代表的な議案 |
|---|---|---|
| 普通決議 | 出席組合員の議決権の過半数(標準管理規約。規約に別段の定めがある場合を除く) | 決算・予算、役員選任、管理委託契約の更新 |
| 特別決議 | 定足数を満たした総会で、出席した組合員およびその議決権の各4分の3以上(2026年4月1日施行の改正区分所有法と令和7年10月改正・公表の標準管理規約) | 管理規約改正、共用部分の大きな変更 |
| 建替え決議 | 区分所有者および議決権の各5分の4以上(原則として総数ベース) | 建替え |
標準管理規約ベースでは、普通決議は出席組合員の議決権の過半数で決します。議決権は専有部分の床面積に応じて配分されるのが一般的です。規約に別段の定めがある場合は、各マンションの管理規約をご確認ください。
普通決議で決める典型的な議案
普通決議は管理組合運営の日常的な意思決定に用いられます。通常総会で審議される決算・予算・役員選任などはほぼ普通決議で可決されます。
- 事業報告・決算報告の承認:前年度の活動結果と会計報告
- 事業計画・予算案の承認:次年度の活動方針と予算
- 役員の選任・解任:理事・監事の選出
- 管理委託契約の更新:同一条件での更新は普通決議
- 使用細則の制定・変更:管理規約の下位ルールは普通決議で足りる
- 共用部分の軽微な変更:機能維持の範囲内の修繕
特別決議が必要な議案|出席ベースの4分の3以上(改正後)
特別決議は、区分所有者の権利義務に大きな影響を与える重要事項に用いられます。可決のハードルが高く、合意形成の手順が特に重要です。
- 管理規約の制定・変更・廃止:マンションの憲法に手を加える行為
- 共用部分の形状または効用の著しい変更:エントランス自動ドア化・機械式駐車場の平面化
- 大規模修繕工事の実施:工事内容により特別決議を要する場合あり
- 建物の一部滅失時の復旧決議:滅失部分が全体の2分の1を超える場合
- 管理組合の法人化:区分所有法第47条
- 規約に基づく区分所有者の権利停止・使用禁止請求:重大な違反への対処
特別決議は事前説明会の開催や議案書の丁寧な構成が合意形成の成否を左右します。機械式駐車場の平面化工事のような高額工事では、複数回の説明会と質疑応答を経て総会に臨むのが一般的です。
判断に迷う議案|使用細則と管理規約の違い
実務でもっとも判断に迷うのが、「管理規約の改正なのか、使用細則の制定・変更なのか」という区別です。使用細則の変更は普通決議で足りますが、管理規約の改正には特別決議が必要です。
| 区分 | 内容 | 決議要件 |
|---|---|---|
| 管理規約 | マンションの基本ルール(理事会構成・総会運営・共用部分の範囲・管理費の計算方法など) | 特別決議 |
| 使用細則 | 日常生活の詳細ルール(ペット飼育・駐輪場利用・ゴミ出し時間など) | 普通決議 |
| 防犯カメラ運用細則・防火管理者細則 | 特定テーマ別の個別細則 | 普通決議 |
判断に迷う場合は、マンション管理士や弁護士に確認するのが安全です。判断を誤って普通決議で処理したが実は特別決議が必要だったとなれば、決議の有効性を争われるリスクがあります。
2026年施行の改正区分所有法による決議要件の見直し
2026年4月1日施行の改正区分所有法と、令和7年10月に改正・公表されたマンション標準管理規約により、規約変更や共用部分変更などの特別決議について、定足数を満たした総会で、出席した区分所有者およびその議決権の各4分の3以上を基準とする整理に見直されました。
所有者不明の区分所有者増加や出席率低下への対応策です。なお、建替え決議など区分所有権の処分を伴う決議は、原則として組合員総数および議決権総数ベースで判断されます。
- 所有者不明区分所有者の議決権を分母から除外できる制度:一定の手続きを経て除外した上で、出席ベースの決議が可能に
- 普通決議は出席組合員の議決権の過半数、特別決議は組合員総数および議決権総数の各過半数の出席を要し、出席組合員およびその議決権の各4分の3以上で決する整理に見直し(標準管理規約)
- 電磁的方法による総会(WEB総会)の明文化:議決権行使が書面・オンラインいずれも法的に有効と明文化
- 建替え決議の要件見直し:一部の老朽化マンションで要件緩和の検討
改正区分所有法の恩恵を受けるには管理規約の対応改正が必要なケースが多いため、改正法の動向を踏まえて規約の見直しを検討することが重要です。
実務上の注意点
- 議案の決議要件を議案書に明記:普通決議か特別決議かを組合員に事前周知
- 委任状・議決権行使書の集約を早めに:特別決議は書面票が可決の鍵
- 議事録に区分所有者数・議決権数・賛成数を具体的に記載:決議の有効性証明
- 特別決議議案は事前説明会を推奨:合意形成のための質疑応答時間を確保
- 特別の影響を及ぼす決議は当事者の承諾を確認:区分所有法第31条の「特別の影響」
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まとめ|決議要件の誤りは決議無効のリスク
総会決議の区分について、ポイントを整理すると以下のとおりです。
- 決議は3段階:普通決議(標準管理規約ベースでは出席組合員の議決権の過半数)・特別決議(定足数を満たした総会で出席組合員およびその議決権の各4分の3以上)・建替え決議(原則として総数ベースで5分の4以上)。改正後、規約変更・共用部分変更などの特別決議は出席者ベースに見直し。建替え決議など区分所有権の処分を伴う決議は原則として総数ベース
- 普通決議は日常運営事項:決算予算・役員選任・使用細則・管理委託契約更新
- 特別決議は重要事項:管理規約改正・共用部分の著しい変更・機械式駐車場平面化
- 使用細則と管理規約の区別に注意:判断迷う場合はマンション管理士・弁護士に確認
- 2026年施行の改正で出席ベースの決議・WEB総会が明文化:規約改正で活用可能
決議要件を誤って処理した場合、決議の有効性を後日争われるリスクがあります。議案ごとに必要な決議区分を事前に整理し、議案書にも明記して組合員に丁寧に周知することが、円滑な総会運営の鍵です。迷った場合は外部の専門家に相談し、慎重に進めましょう。
