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マンションの機械式駐車場設備の維持管理の費用負担の問題と危険性

マンションの駐車場の維持管理管理組合向け
管理組合向け
マンションの駐車場設備にはいくつか種類がありますが、駐車場設備の維持管理には思いのほか費用負担を大きいことや、空き区画の増加などにより管理組合の財務を圧迫することが問題になっています。空き区画対策として、マンション以外に貸し出す外部貸しなどをおこなうマンションも増えてきました。今回は、マンションの機械式駐車場の問題と危険性について考えていきます。

マンションの駐車場設備の実態調査

駐車場の有無(住宅部分)|出所:平成30年度マンション総合調査

駐車場の有無(住宅部分)|出所:平成30年度マンション総合調査

平成30年度マンション総合調査によると、駐車場のあるマンションが全体の『88.5%』、駐車場のないマンションが全体の『6.7%』で、分譲マンションのほとんどで駐車場設備を保有しています。

マンションの駐車場の種類

マンションの駐車場の種類(住宅部分)|出所:平成30年度マンション総合調査

マンションの駐車場の種類(住宅部分)|出所:平成30年度マンション総合調査

駐車場の種類別では「平面式」78.0%、「機械式」32.2%、「立体自走式」5.3%となっています。分譲マンションの魅力のひとつに駐車場が自宅内にあるということがあげられるでしょう。利用者の使い勝手の面では平面式駐車場が機械操作の不便もないことから魅力がありますが、都心部など地価の高い地域では、機械式駐車場も多くみられます。

マンションの駐車場設備(1)平面式駐車場

平置き駐車場ならメンテナンス費用は掛かりません

平置き駐車場ならメンテナンス費用は掛かりません

一番オーソドックスでシンプルな駐車場の利用形態が平面式(平置き)駐車場と呼ばれるものです。
敷地の空きスペースなどを利用して、白線を引いて区画を設け、その区画ごとに駐車します。機械式駐車場設備が充分に普及していなかった古いマンションに多い形態です。広い敷地を必要としますので、地方都市のマンションや郊外の大型マンションなどでよく利用されている形態です。平置きの駐車場はマンションの敷地の路面に直接駐車しますのでメンテナンスの費用はほとんどかかりません。

マンションの駐車場設備(2)機械式駐車場


狭い空間を有効利用することを目的として、ここ十数年くらいの間に普及してきた形態です。2段パレット、3段パレットといったようにパレット(車が乗る台のことで、ちょうど料理をのせるお皿と同じ役割を果たしているものです)が、機械操作により上下あるいは左右に移動することにより、車の出し入れを行う形態を指します。操作盤を利用してご自分の車の入っているパレットを呼び出して、車の出し入れを行います。車を実際に入出庫させるまでに数十秒から数分の時間を必要とすることから、利用者が不満を抱くケースも多いようです。

機械式駐車場に入庫できる車両サイズの制限

機械式駐車場に入庫できる車両のサイズには統一規格はありませんが必ず制限が設けられています。したがって駐車にあたっては自分の車が入庫できる車両サイズの制限以内であるかを事前に確認する必要があります。機械式駐車場に入庫できる車両サイズの制限には「車幅」「車長」「車高」「重量」等がありますが、分譲マンションで一般的となっている3段ピット式の機械式駐車場の場合には、2段目のパレットの高さ制限が厳しい構造になっていることが多いようです。サイズ制限をオーバーした車両でも物理的には入庫が可能な場合がありますが、駐車装置の動作時や地震の揺れによって車に傷がついたり、過去には地震によって、重量オーバーの車両の転落事故なども起っているため、制限オーバーの車両の駐車は厳禁です。

マンションの駐車場設備(3)立体駐車場


別名タワーパーキングなどとも呼ばれる駐車場で、文字通りタワーのようにそびえ立つ駐車場に車が立体的に収納されています。操作盤にカードを出し入れするなどして、特定のパレットを呼び寄せて車を入出庫させるのが一般的な仕組みです。夏の暑い期間や冬の寒い期間は利用者の方からすると時間がかかり、面倒と言った声を耳にすることもあります。狭い敷地であっても効率的に多くの車を収納できますが、機械式駐車場と同じように特定のパレットを呼び出すのに、数分時間がかかります。

マンションの駐車場設備(4)立体自走式駐車場


平置駐車場をさらに有効活用し、2層3段、3層4段というようにフラットな駐車場と車が上下階に出入りするスロープなどを組み合わせた駐車場の形態です。平置駐車場と同じように平面区画に駐車ができますが、より多くの台数の車を収納することが可能で、また機械式駐車場や立体駐車場に比べて設備のメンテナンス費用が大幅に安くなるという特徴があります。大規模なマンションに設置されている方式です。

マンションの駐車場設備の維持管理は、意外と費用がかかる

これまで、マンションで利用されている主だった駐車場設備について、その種類と特徴の概略を見てきましたが、駐車場設備の維持管理という点に焦点を当てると、これらの形態の違いにより、維持メンテナンスにかかるコストというものが大きく異なってきます。
駐車場設備の維持費は各区分所有者が管理組合に対して支払った管理費をはじめとした諸費用の中から捻出されることになります。単年度のみで考えていくと大した金額と映らないかもしれませんが、管理組合全体、また20年、30年といった大きな視点でこの金額を俯瞰すると、膨大な金額になりますので、決して見落としてはならない大きなコスト負担となります。

駐車場の保守点検の必要性

保守メンテナンスに関するご質問
Q.保守メンテナンスは法定点検ですか?
A. 法定点検ではありませんが、建築基準法第八条 維持保全に基づき、定期保守をお勧めしています。
建築基準法第8条(維持保全)
建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
公益社団法人立体駐車場工業会のホームページより

機械式駐車場はエレベーターと違い法定の点検はありませんが、機械に不具合があっては重大事故を引き起こす可能性があるので定期的な保守点検が必要です。

排水ポンプの点検も必要

また、駐車場本体だけではなく駐車場の下にある排水ピットの清掃や排水ポンプの点検も定期的に実施する必要があります。駐車場の地下のピットには雨天時に水貯まるとポンプが作動して水を排水する構造になっています。この排水ポンプが作動しないと車両の浸水事故などにつながります。法的な制限がなくても安全を確保するために専門業者に依頼して定期的なチェックや保守は欠かせません。

 保守点検費用の相場は1台あたり月額3,000円程度

機械式駐車場を設置している場合は、法定点検ではありませんが安全にかかわることですので、定期的に点検をおこないます。点検作業は管理会社を通じて専門業者がおこない理事はその報告を受け取ります。

機械式駐車場の保守点検費用は、一般的な昇降式で、1パレット(1台)あたり年間20,000~30,000円程度が一般的です。点検回数は、年間で4~6回程度ですので、月額だと3,000~5,000円程度になります。

作業内容についても法定点検が義務付けられているわけではありませんので、点検内容は業者任せになっています。一般的に理事会でおこなっているのは保守点検作業後に提出される報告書を確認するぐらいです。
そこで実際に点検作業でどんな作業をしているのか一度、理事会で点検作業に立ち会ってみてはいかがでしょうか。あきらかに手抜きな作業がおこなわれている場合には、素人目にもわかることが多いものです。点検報告書に記載されている点検時間や人数などが守られていないなど、報告書の内容との相違があることも残念ながらよくあります。

メーカ系と独立系の保守会社

エレベーター保守会社と同様に機械式駐車場でも製造したメーカー系と、基本的にどのメーカーの保守も引き受ける独立系保守業者にわかれます。費用面では独立系の保守業者の方が安価な傾向がありますが、保守の内容が故障時の出動対応まで含むか否か、部品交換時の費用負担などにより、単純に比較することはできないので確認が必要です。費用負担が問題となる場合には、独立系の業者を検討しても良いでしょう。
保守業者の変更に関しては、エレベーター保守業界以上に機械式駐車場保守業界はメーカー系保守業者の影響力が強く、独立系保守会社に変更するとメーカーからの部品調達価格や納期などで嫌がらせを受けたなどのケースも多くありますので、そのあたりのリスクを慎重に検討する必要があります。

マンションの駐車場設備が管理組合の会計を圧迫

駐車場が平面式駐車場の場合は、区画の白線を引き直したり、アスファルトを整備し直すくらいでですので、それほど維持・管理費は必要ありません。しか機械式駐車場設備は、維持や管理に莫大なお金がかかります。新築マンション購入時は特段ランニングコストを気にすることもないでしょう。しかし、これが10年、15年と月日が経過するにつれて、次第に目に見えて、管理組合の会計を圧迫するぐらいのランニングコストがかかってくるのが一般的です。

駐車場使用料は「管理費」「修繕積立金」のどちらに入れる?

駐車場使用料を、管理費もしくは修繕積立金として取り扱うかは、管理組合の規約によって定められています。機械式駐車場の場合は、将来多額の改修費用が発生しますので、機械式駐車場を維持するための費用を支払った後は、将来に備えて修繕積立金として積み立てることが望ましいと考えられます。

駐車場設備のランニングコスト対策

機械式駐車場は、専門業者による点検の他に、ある程度年数が経過すると部品交換費用などで高額な出費が必要となります。このように、経年とともに次第にジワジワと管理組合の会計を圧迫してくることが予測される駐車場設備に対しては、有効な対応策を予め考えておくことが大切です。具体的には、長期修繕計画を参考にマンションの資金計画を早期に見直し、駐車場設備の維持・管理のために必要な修繕積立金を算出しましょう。

駐車場の空き区画の増加が問題

また、年月の経過とともに、世帯の家族構成なども変化していきますので、次第に車を使用する必要性が薄れてきて、駐車場に「空き」区画が多くなるケースも出てくるかもしれません。そもそも自治体の条例で一定台数の設置が義務付けられる(附置義務駐車場)ケースも多く、分譲時点で駐車場の需要がない場所でも、必要以上の駐車場台数を設置をする傾向があります。
自分たちのマンションの駐車場で空き区画が増えた場合には、必要な駐車場使用料収入が管理組合に入ってこないことになりますので、管理組合の会計を圧迫する事態となりかねません。

近隣の相場を参考に駐車場の使用料の見直しを

空き区画が増えた場合には、こうした事態を放ったらかしにせず、直ちに空き募集を行い、それでも利用者が大幅に減少してきたときは、近隣の駐車場相場などを参考に、駐車場使用料の見直しをおこない、できる限り空き区画がでないような対策をおこなうことが基本です。
さらに事態が深刻な場合には、機械式駐車場設備を取り壊すなどの対応も検討していく必要があるでしょう。機械式駐車場を廃止するには、地下ピットを埋め戻しや、埋めずに鉄板などで塞ぐことで平置駐車場に改修する方法などがあります。

マンション駐車場の空き区画・アンケート調査についての文例・サンプル
分譲マンションの駐車場は、昨今の自動車離れという状況や居住者の高齢化などを背景に、空き区画の増加が問題になっています […]

空き駐車場対策の切り札となるか「マンション駐車場の外部貸し」

マンションの空き駐車場区画をマンション外の方に「外部貸し」を行った場合、これが課税対象となるのかどうか?国税庁は、平成24年2月13日付で「マンション管理組合が区分所有者以外の者へのマンション駐車場の使用を認めた場合の収益事業の判定について」をホームページに公開し、収益事業に該当する場合、収益事業に該当しない場合の例示を行いました。

駐車場外部貸しの課税対象

  • マンションの居住者などと外部利用者が分け隔てなく、これを利用する場合は全て課税対象
  • 両者を識別して、居住者などに優先利用権を与える場合は外部利用者のみ課税対象
  • 工事などで1か月といった短期間、これを臨時に利用する場合などは課税対象外

マンション駐車場のサブリース会社「マンション駐車場の外部貸し」

先ほど説明したように、マンションの駐車場収入は居住者が使用する分については、税金は発生しません。一方で、マンションの駐車場を外部の方に貸し出した場合には、マンション管理組合にも納税義務が生じることが明らかになりました。外部に駐車場を貸し出しをすると、その分は収益事業とみなされ法人税が課税されます。こういった税金に関することはマンション管理会社ではなく、税理士等の税務のプロにサポートを求める必要があり、また管理組合が直接、外部の方に駐車場募集をおこなうのも簡単ではありません。こういった事情から、マンションの駐車場を管理組合から一括契約で借上げた上で、近隣の住人に貸し出しをおこなう、マンション駐車場のサブリース会社がでてきました。マンション駐車場の空き区画を外部貸しする場合には、理事の負担を軽減するためにも、こういったサブリース会社のサービス導入を検討しても良いでしょう。

機械式立体駐車場の安全対策を今すぐ見なおそう

平成26年10月に改定された械式立体駐車場の安全対策に関するガイドラインによると機械式立体駐車場における一般利用者等の死亡・重傷事故は、平成19年度以降、少なくとも26件発生しており、児童が亡くなる痛ましい事故も発生しています。
機械式立体駐車場については、その設備ごとに危険な箇所や注意すべき点が異なり、製造者、保守点検業者、管理会社、管理組合、利用者等は、それぞれ連携・協力して安全対策に取り組むことが必要です。
マンションでの痛ましい事故を防ぐためにも、マンション管理組合や理事会では、自分たちで行える取り組みについて改めて考え直すことが大切です。

マンションの機械式駐車場の危険性についての関連サイト

■【外部サイト:動画】
多段式駐車装置の正しい利用方法及び事故事例/公益社団法人 立体駐車場工業会

■ 公益社団法人立体駐車場工業会のホームページ
機械式駐車場を安全にご使用いただくためのパンフレット

■ マンション管理業協会のホームページ
機械式立体駐車場の安全対策についての取材レポート

この記事のまとめ

このように、経年とともに駐車場設備にかかる費用は管理組合の財政を圧迫してきます。前出のとおり、長期修繕計画を早期に見直し、駐車場設備の維持・管理のために必要な修繕積立金の見直しをおこなうか、あるいは駐車場使用料の見直しをおこなう必要があります。また、マンションの駐車場で忘れてはいけないのが、特に機械式立体駐車場での事故の危険性です。実際に多くのマンションで痛ましい事故がおこり、マンションでもっとも事故の危険性が高いのが機械式駐車場です。
駐車場設備ごとに危険な箇所や注意すべき点が異なりますので、すべてをここで触れることはできませんが、マンション管理組合や理事会では、自分たちで行える取り組みについて改めて考え直し、それぞれ連携・協力して安全対策に取り組むことが必要です。
そして、駐車場保守点検業者やマンション管理会社の担当者・マンション管理士は担当するマンションで機械式駐車場の危険性について啓蒙するとともに、その対策について提案する必要があるでしょう。
管理組合向け
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