マンションの「立体機械式駐車場」を解体・撤去する『平面化工事』とは?

マンションの「立体機械式駐車場」を解体・撤去する『平面化工事』管理組合向け
編集部

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かつては分譲時のセールスポイントの一つでもあったマンションの「立体機械式駐車場」も、数十年の時を経て、維持管理に多額のメンテナンス費用が掛かるお荷物になりつつあります。マイカーの保有率が高いころはマンションに駐車場があることはマンション購入の大きな動機となりました。それが今や管理組合のなかで立体機械式駐車場を存続するのか解体・撤去するかの判断を迫られています。しかし、立体機械式駐車場を解体するにも費用がかかるので管理組合の中でも判断が分かれるところです。今回は『立体機械式駐車場の解体・撤去の現状』について考えていきます。

附置義務により必要以上につくられる駐車場

最近の都市部のマンションの駐車場の主流は機械式駐車場ですが、これは路上での違法駐車が社会問題になっていた時代に行政が駐車場の「附置義務」を設けたからです。附置義務というのは、マンションなどの集合住宅の戸数に応じて一定数以上の駐車場の設置を義務づけるものです。敷地面積が十分に取れない都市型のマンションの場合には機械式立体駐車場によりこの条件をクリアしています。ですから、そもそもマンションの駐車場の数は、駐車場の需要を想定して決められているわけではないということです。

立体機械式駐車場の「解体・撤去」及び「平面化」工事

マンションの長期修繕計画では、機械式駐車場の更新費用が莫大な金額で計上されており、いずれはこの費用を捻出するための修繕積立金が足りないといった事態に陥る可能性があります。こうした事態をさけるため、思い切って機械式駐車場の全部、または一部を解体・撤去してしまうという選択肢があります。

機械式駐車場の平面化工事

機械式駐車場の解体とは、駐車装置を撤去した後に残った地下ピットを、土砂などで埋め戻したり、鋼製の板でフタをすることです。

機械式駐車場は空きであっても点検費用が掛かる

一昔前はマンションの敷地内の駐車場はとても人気が高く空き待ちが出るほどでした。最近では特に若年層の車離れが進んで特に都市部の駐車場では空きスペースが増えています。契約台数が減ることで管理組合の収入は減少しますが、空き区画であってもメンテナンスのための点検費用がかかることには変わりはありません。そこでメンテナンス費用のかかる機械式駐車場を潰して平置きの駐車場に変更したり、駐輪場や、電気自動車の充電スタンドのスペースとして活用するといった管理組合が増加しています。

機械式駐車場を撤去して地下ピットを塞ぐ
マンションの立体機械式駐車場の耐用年数まで、まだまだ余裕があるのになぜ撤去・解体が必要になるのでしょうか?理由として挙げられるのは、よく知られている「車離れによる契約台数の減少」のほか、RVやミニバンなどの車高の高いクルマが人気をよび「収納できる車両サイズに制限」のある立体機械式駐車場が避けられる傾向にあるからです。

マンションでは収納できる車両サイズに制限がある機械式駐車場が避けられる

駐車場の外部貸し出しの方法もあるけど。。。

最近では「駐車場の外部貸し」に関する話題も多くなっていますが、駐車場の「外部への有料での貸し出し」は「収益事業」とみなされて課税の対象となるため、積極的な外部への貸し出しもおこなわれていないのが実情です。

分譲マンションでの駐車場の貸し出しは管理組合の負担を避けるためにサブリース会社に委託するケースがほとんどですが、その場合には管理組合が受け取れる使用料は駐車料金の3割から4割程度になってしまいます。また、住人以外の第三者が敷地に出入りすることからセキュリティの確保が課題になります。

今後もマンションの駐車場の空きが増加する理由

今後も「若者を中心とした車離れ」や「シェア自動車の発展」「クルマのEV化」が増々進行して、マンション管理組合が、これまでの駐車場の契約台数を維持することは困難でしょう。

機械式駐車場の平面化を検討する理由

  1. 少子高齢化や交通利便性の向上といった社会情勢の変化
  2. RVやミニバンが立体機械式駐車場には収納できない
  3. EV充電スタンドなどの電気自動車への対応が遅れている

現時点で、あまりにも「駐車場の空き率」が高い状況では、将来を見据えて立体機械式駐車場の解体・撤去をおこなって「駐車場の廃止」や「平置き」への変更を検討することには合理的な理由があります。

立体機械式駐車場を「一部」を解体する方法が主流

立体機械式駐車場の一部を解体・撤去

すべての立体機械式駐車場を解体するということであれば、管理組合の判断も慎重にならざるを得ません。すでに駐車場を契約している者にとっては非常に影響の大きいことだからです。

立体機械式駐車場を撤去することによってマンションの敷地内に駐車場を確保できないといった事態になれば、敷地外の月極の有料駐車場を管理組合が紹介するなどの対応も必要になります。実際に立体機械式駐車場の解体・撤去をおこなった事例を見ても、敷地内の駐車場の一部を撤去するケースがほとんどです。

マンションの駐車場の全ての解体・撤去は難しい!

仮に敷地内の立体機械式駐車場のすべてを解体・撤去する場合には、以下で説明するように立体機械式駐車場導入に関わる総会の決議要件も「現行の駐車場利用者に特別の影響を与える」ことになり、現行の駐車場利用者からの承諾は不可欠です。

一方で立体機械式駐車場の「一部を解体もしくは平面置き」として引き続き利用できる場合には、駐車場の利用者に特別の影響を与えないため「総会の特別決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成)」を履行すれば問題ないでしょう。

立体機械式駐車場解体の決議要件

マンション立体機械式駐車場の解体・撤去は「共用部分の変更」に該当するため、原則として「総会の特別決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成)」が必要です。争点は、この共用部分の変更が「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当するか否かということです。立体機械式駐車場を解体・撤去することで、マンション敷地内から駐車場が全くなくなってしまい駐車場をすでに利用している区分所有者が、マンションの敷地外の代替の駐車場を借りるということであれば「特別の影響を及ぼす」とされ、現行の機械式駐車場利用者の個別の承諾が必要となるでしょう。

この記事のまとめ

立体機械式駐車場を抱えるマンションにとって駐車場の稼働率低下による使用料の減少は頭の痛い問題です。駐車場の契約数が減っても、稼働状況に関わりなく駐車場の保守点検費用は支払い続けなければならないからです。

また将来は莫大な費用が掛かる「駐車場を全面的に入れ替える」リニューアル工事も控えています。立体機械式駐車場を解体・撤去すれば、こうした費用を削減することができます。現在では「駐車場の空きが社会問題化」していることもあってマンションでの駐車場の「附置率の緩和」措置を講じている自治体も増えています。こうした流れを受け今後は「立体機械式駐車場を解体・撤去」をおこなう管理組合も増えてくるでしょう。

もちろん、管理組合で機械式駐車場の解体・撤去を検討した結果、当面は駐車場の撤去は行わないという結論に達することもあるでしょう。この場合には駐車場の使用料を全額管理費会計に入れるのではなく、長期修繕計画に将来の駐車場設備の更新費用を計上した上で、修繕積立金会計にも費用を入れておくことが大切です。