
マンション管理組合の総会では、議案の重要性に応じて「普通決議」と「特別決議」の2種類の決議方法が用いられます。2025年の区分所有法改正により、これらの決議要件が一部緩和され、より柔軟な運営が可能となりました。この記事では、最新の法改正情報を踏まえ、普通決議と特別決議の違いや具体的な適用事例について解説します。
普通決議とは?
普通決議は、日常的な管理運営に関する事項を決定する際に用いられます。従来は、総会に出席している組合員の議決権および区分所有者数の各過半数の賛成が必要でしたが、2025年の法改正により、一定の条件下で出席者の過半数の賛成で決議が可能となりました。
主な普通決議事項の例
| 内容 | 区分所有法の条文 | 補足 |
|---|---|---|
| 共用部分の管理(変更を除く) | 第18条 | 理事会で決定できるよう規約で定めることも可能 |
| 敷地・附属施設の管理(変更を除く) | 第21条 | ー |
| 管理者・理事・監事の選任および解任 | 第25条・第49条 | ー |
| 議長の選任 | 第41条 | ー |
| 小規模な一部滅失の復旧 | 第61条 | ー |
| 訴訟の追行に関する権限付与 | 第57〜60条 | ー |
特別決議とは?
特別決議は、マンション全体の方針に関わる重大な事項を扱う際に必要です。従来は、全区分所有者および総議決権数の各4分の3以上の賛成が必要でしたが、2025年の法改正により、一定の条件下で出席者の4分の3以上の賛成で決議が可能となりました。
主な特別決議事項の例
| 内容 | 必要な定数 | 条文・法令 |
|---|---|---|
| 共用部分の形状や効用の著しい変更 | 4分の3以上 | 第17条 |
| 敷地や附属施設の変更 | 4分の3以上 | 第21条 |
| 管理規約の設定・変更・廃止 | 4分の3以上 | 第31条 |
| 管理組合法人の設立・解散 | 4分の3以上 | 第47・55条 |
| 反社会的行為をする区分所有者に対する 使用禁止・競売請求など | 4分の3以上 | 第58〜60条 |
| 大規模滅失からの復旧 | 4分の3以上 | 第61条 |
| 建替え決議・敷地売却決議 | 5分の4以上 | 第62条、建替法第108条 |
2025年の区分所有法改正のポイント
1. 決議要件の緩和
所在不明の区分所有者や議決権を行使しない所有者が多い場合、従来の決議要件を満たすことが困難でした。改正により、裁判所の判断でこれらの所有者を議決権の母数から除外できるようになり、出席者の多数決で決議が可能となりました。
2. 共用部分の変更決議の要件緩和
バリアフリー化や安全性向上のための共用部分の変更については、従来の4分の3以上の賛成から、3分の2以上の賛成で決議が可能となりました。
3. 建替え決議の要件緩和
耐震性不足や老朽化など一定の条件を満たす場合、建替え決議の要件が従来の5分の4以上の賛成から、4分の3以上の賛成で可能となりました。
使用細則と管理規約の違いに注意
実務上で混同されやすいのが、「使用細則」と「管理規約」の改定です。
- 使用細則の改定は「普通決議」で可能です。
- 管理規約の改定は「特別決議」が必要です。
この違いを正確に理解し、総会の議案作成や運営に反映させることが重要です。
まとめ
マンションの総会では、議案の重要度に応じて「普通決議」と「特別決議」が用いられます。2025年の区分所有法改正により、決議要件が一部緩和され、より柔軟な運営が可能となりました。理事や管理会社が議案を作成する際には、最新の法改正情報を踏まえ、適切な決議方法を選択し、議案書に明記することが求められます。特に、使用細則は普通決議で、管理規約は特別決議が必要とされる点など、細かな違いにも注意を払うことが、トラブルの防止とスムーズな管理運営の第一歩です。