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自主管理マンションの現状と課題:理事のなり手不足が深刻化


自主管理マンションは特に理事のなり手不足が深刻である|理事会運営

管理会社に業務を委託せず、理事会を中心にすべての管理業務を担う「自主管理マンション」。コスト面でのメリットはあるものの、理事の負担は非常に重く、特に高齢化が進むマンションでは、継続が困難なケースも増えています。この記事では、自主管理マンションの現状と課題について最新の情報をもとに解説します。


自主管理マンションとは?

自主管理マンションとは、管理会社に業務を委託せず、区分所有者で構成される管理組合が自らすべての管理業務を行うマンションのことです。共用部の清掃や会計、修繕計画の立案、設備点検業者との契約など、多くの業務を理事会が担います。

この方式は、管理費を抑えられる反面、管理組合の負担が非常に大きいのが特徴です。特に住人の高齢化や賃貸化が進んでいるマンションでは、理事のなり手不足が深刻になりやすく、安定した管理が難しくなる傾向があります。


管理形態の種類と特徴

現在の分譲マンションにおける代表的な管理形態は、以下の3つに分類されます。

管理形態業務内容の特徴採用割合(参考:令和5年度調査)
全部委託管理管理会社が日常業務を一括代行約80%
一部委託管理一部業務のみ管理会社に委託約13%
自主管理全業務を理事会が対応約6.8%

※出所:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」


自主管理マンションのメリット

メリット1|管理費が安く抑えられる
管理会社に支払う委託費が不要となるため、管理費全体の削減が可能です。中には6〜7割のコストカットが見込めるケースもあります。

メリット2|住人の結束が高まる
管理会社に頼らない分、住民同士の協力や連携が不可欠となり、マンション全体の一体感が生まれやすくなります。自分たちのマンションをよりよくしようという意識が高まることも、自主管理の利点の一つです。


自主管理マンションのデメリット

デメリット1|理事のなり手不足
理事会の業務は多岐にわたるため、高齢化や多忙な世代の増加により、役員の担い手が不足しがちです。特に築年数が経過したマンションでは、理事のなり手不足が深刻化しています。

デメリット2|規模が大きいと対応が困難
10〜20戸程度の小規模マンションであれば何とか対応できても、大規模マンションでは管理の煩雑さや専門性が増し、自主管理は現実的でないケースがほとんどです。財務管理や大規模修繕の実施など、専門的な知識や労力が必要とされる場面が多くなります。


自主管理を検討する際の注意点

自主管理は理論上、費用を最小限に抑えられる理想的な運営方法です。しかしながら、数十年にわたって安定した運営体制を維持できるかどうかが重要なポイントとなります。

特に以下の点に留意すべきです:

  • 長期的な理事体制の維持が可能か
  • 専門性が求められる業務への対応方法はどうするか
  • 役員にかかる心理的・時間的負担はどれほどか

短期的なコストダウンだけで判断せず、現実的かつ継続可能な体制かを慎重に検討すべきです。


管理会社への委託に回帰する流れも

最近では、理事の負担軽減やトラブルの回避を目的に、再び管理会社へ業務委託する管理組合が増加しています。

また、第三者管理方式といって、外部の専門家(マンション管理士など)が理事長を務める方法も注目されています。これは、理事のなり手がいない問題の解決策として今後さらに普及していく可能性があります。とくに高齢化が進むマンションでは、有効な選択肢となりえます。


まとめ

自主管理マンションは、管理会社に頼らずコストを抑えながら、住民の協力で成り立つ理想的な管理方式のひとつです。しかしながら、理事のなり手不足や業務の専門性の高さといった現実的な課題も多く、継続するには強い意識と体制が求められます。現実的には、多くの管理組合にとって、管理会社の支援を受けつつ、必要な業務を効率的に進める「部分委託」などの柔軟な管理形態が望ましいでしょう。マンション管理は一度きりの判断ではなく、将来を見据えた持続可能な体制づくりが大切です。

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