
マンションの管理組合には、日々の運営に関する「議事録」や「規約」、「修繕履歴」など、さまざまな書類の管理が求められます。中でも、建物の構造や設備を把握するうえで欠かせないのが「竣工図書」です。これらの書類は年々増え続けるため、適切に保管しなければ、紛失や劣化のリスクが高まります。この記事では、管理組合にとっての書類保管の重要性と効果的な保管方法について学んでいきます。
書類保管は理事会の大切な仕事のひとつ
理事会が担う役割の中でも、書類の保管・整理は非常に重要です。管理組合における主な保管書類には以下のようなものがあります。
| 書類の種類 | 内容 |
|---|---|
| 管理規約・使用細則 | 原本および改正履歴 |
| 総会・理事会の議事録 | 議案書と記録文書 |
| 修繕履歴書 | 工事記録や業者の報告書など |
| 設計図書・竣工図書 | 建物や設備の詳細図面や仕様書 |
| 管理委託契約書・保険証書 | 契約内容と保険関係書類 |
| 名簿や帳票類 | 組合員名簿、会計帳簿など |
こうした書類が「段ボール箱にまとめて管理室の隅に…」という状態では、いざというときに必要な情報を取り出せず、管理の信頼性にも影響します。
書類保管の主な方法2選
方法1:管理室や集会室に鍵付きキャビネットを設置
一般的な書類の保管方法は、管理室や集会室に鍵付きのキャビネットを設けて保管する方法です。とくに竣工図書や修繕履歴など、外部業者が頻繁に利用する資料は、貸し出し記録簿を作成して管理することで、返却漏れや紛失を防ぎます。
管理室には管理会社の担当者や業者が自由に出入りすることもあるため、書類は別途専用の鍵付き収納で保管しましょう。
方法2:電子化によるクラウドやデジタル保存
大型の図面や過去の書類が増え続ける中で、電子化サービスを活用するマンションも増えています。図面や議事録をスキャンしてPDF化し、クラウドで保管すれば、保管スペースも不要になり、検索や共有も簡単です。特に、小規模マンションで物理的な保管スペースが確保できない場合には、電子化が非常に有効です。
紛失しやすい原因とその対策
管理組合の重要書類は、以下のようなタイミングで紛失してしまうことがあります。
| 紛失の主な原因 | 対策 |
|---|---|
| 理事交代時に引き継がれない | 引継ぎマニュアルや書類リストの作成 |
| 管理会社変更時に資料が未引継ぎ | 変更時のチェックリスト作成 |
| 工事業者や不動産業者への貸出後に未返却 | 貸出記録と返却期限の明記 |
| 竣工時に分譲業者から受領していない | 設計事務所等への確認と再取得(有料) |
とくに竣工図書は、建物の全体像を知るうえで非常に貴重な資料です。もし手元にない場合は、設計事務所に依頼して再作成できる可能性もありますが、その際は高額な費用が発生することもあるため、事前の確認が大切です。
竣工図書の中身とは?
竣工図書とは、建築工事完了時に整備される建物の詳細資料のことを指します。以下のような構成になっているのが一般的です。
| 図書の名称 | 内容の例 |
|---|---|
| 配置図・見取図 | 建物と敷地の関係が分かる図面 |
| 各階平面図・立面図 | 建物の各階や外観の詳細 |
| 仕様書・仕上表 | 内装や外装の仕上げ内容 |
| 設備図 | 給排水、電気、ガスなどの設備構成 |
| 構造計算書 | 耐震性・基礎構造の安全性に関する情報 |
| 建築確認済証 | 建築基準法に基づく法的書類 |
これらは、修繕工事の計画や災害時の対応にも役立ちますので、しっかりと保管しておくことが求められます。
まとめ
マンションの管理組合の適正な運営には「管理規約の原本」「総会・理事会の議事録」「設計図書」「修繕履歴」などを適切に管理しておくことが不可欠です。また、例え「保管」や「保存」がされていても、きちんと「項目ごと」「時系列別」に整理されていなければ必要なときにすぐに見られないといった事態にもなります。書類を種類別にファイリング保管し、できれば保管文書の保管期間を管理規約または文書保管細則等で定めることが望ましいでしょう。理事会が中心となって、管理組合の「保管書類の一覧表」リストを作成して、重要書類がどこに保管されているか管理をおこうことが重要です。