
マンションの管理は、理事会や管理組合が主体となって行うのが原則です。しかし、管理の専門知識や経験が限られている理事だけで対応するのは困難です。そのため、多くのマンションでは、専門知識を持つ管理会社に業務を委託しています。では、実際にどのような業務が委託され、どのように管理会社が選ばれているのでしょうか?この記事では、国土交通省「令和5年度マンション総合調査」の結果をもとに、マンション管理会社への業務委託の実態を学んでいきます。
管理会社への業務委託の実態
令和5年度マンション総合調査によると、マンションの管理方式は以下のようになっています。
| 管理形態 | 割合 |
|---|---|
| 管理会社に委託 | 78.3% |
| 自主管理 | 19.4% |
| その他 | 2.3% |
このように、約8割のマンションが管理会社に業務を委託しており、専門的な知識と経験を持つ管理会社の活用が一般的となっています。
出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」
管理会社に委託している業務内容
管理会社に委託されている主な業務には以下のものがあります。
- 管理事務全般:管理費の徴収、会計業務、理事会運営支援
- 設備管理:エレベーター、消防設備、給排水設備の点検・保守
- 清掃業務:共用部分の清掃やごみ置き場の管理
- 管理員業務:来訪者の対応、簡易点検、掲示板管理 など
これらの業務を管理会社に一括で委託している管理組合は多く、全体の74.1%が基幹事務を含めたすべての管理事務を委託しているという結果もあります。
出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」
管理会社の選定と変更(リプレイス)の実態
管理会社の選定方法について、令和5年度の調査では以下のようになっています。
| 選定方法 | 割合 |
|---|---|
| 分譲業者が指定した会社がそのまま継続 | 73.1% |
| 管理組合が選定した | 26.9% |
このように、多くのマンションでは分譲時からの管理会社が継続されているものの、近年では「管理費の見直し」や「サービスの質の改善」を目的に、管理会社を変更するリプレイスも増加傾向にあります。
出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」
契約書の内容と標準管理委託契約書への準拠状況
マンションの管理委託契約書の内容が、国交省が示す「マンション標準管理委託契約書」にどの程度準拠しているかの調査では、
- 「概ね準拠している」管理組合が94.6% という結果になっています。
しかし、内容を細かく確認すると管理会社に有利な条文が盛り込まれている場合もあり、注意が必要です。管理組合側に不利な条件になっていないか、マンション管理士などの第三者によるチェックが推奨されます。
出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」
まとめ
多くのマンションでは、共用部分や敷地の管理を専門知識を持つ管理会社に委託しています。管理会社に任せている業務は多岐にわたり、設備の維持やトラブル対応、滞納管理など、理事会だけでは負担の大きい仕事をカバーしています。ただし、管理会社に全面的に任せているからといって油断は禁物です。契約内容が管理会社に有利なものになっていないか、また業務が適切に実施されているかをチェックする「監視の目」も必要です。マンション管理士などの外部専門家を活用しながら、理事会が主導権を握りつつ、信頼できる管理会社と協力関係を築いていくことが理想的です。