
マンション管理組合の理事の選任には、「輪番制」と「立候補制」という2つの方法があります。いずれも一長一短があり、どちらが優れているとは一概には言えませんが、国の調査によれば、現在は約7割のマンションで輪番制が採用されています。この記事では、理事の選任方法の違いや、それぞれのメリット・デメリットについて学んでいきます。
輪番制とは?その特徴と選ばれる理由
輪番制とは、住戸ごとに順番をあらかじめ決め、持ち回りで理事を務める方法です。毎年すべての理事を改選する形式や、2年任期で半数ずつ交代する形式などがあります。立候補者が少ない現実を踏まえ、平等に役割を担う手段として広く導入されています。
| メリット(輪番制) | デメリット(輪番制) |
|---|---|
| 多くの組合員が理事を経験できる | 理事会活動が停滞するおそれがある |
| 公平性があり、不満が出にくい | 順番が来ても辞退者が多い場合がある |
| 役員になる時期が事前にわかる | 理事会運営の継続性に欠けやすい |
| 特定メンバーの長期化を防げる | 経験や意欲のない人が就任する可能性 |
ポイント: 輪番制は「誰もが理事になりうる」仕組みのため、管理組合に対する理解が広がる一方、受動的なメンバーが揃うと理事会の機能が低下するリスクもあります。
立候補制とは?その特徴と期待される効果
立候補制は、自ら手を挙げた人を総会で承認し、理事に選任する方式です。掲示板などで候補者を募集するのが一般的で、輪番制と併用しているマンションも少なくありません。
| メリット(立候補制) | デメリット(立候補制) |
|---|---|
| 熱意や知識のある人が理事になる | 一部の人が長期間理事を続けがち |
| 合意形成がしやすくなることがある | ワンマン体制・癒着リスクが高まる可能性 |
| 管理への関心が高い人が参加しやすい | 住民の関心が薄れる原因になることも |
ポイント: 立候補制は「やる気のある人」が活躍しやすく、管理の質向上が期待できる一方で、役員が固定化することで理事会の私物化や不正の温床になりかねません。
任期設定と再任ルールの工夫も重要
標準管理規約では「役員の再任を妨げない」とされていますが、特定の人物が長く理事や理事長を務めることで、他の住民の関心が薄れる傾向があります。このため、「理事長は1期まで」「再任は1回まで」といったルールを設けることで、役員の偏りを防ぎ、健全な運営が期待できます。
実態は?選任方法の調査結果
以下は、国土交通省が実施した平成30年度のマンション総合調査による選任方法の実態です。
| 選任方法 | 採用割合 |
|---|---|
| 順番(輪番制) | 75.2% |
| 立候補 | 32.9% |
※複数回答のため、合計は100%を超えます。
まとめ
分譲マンションの理事の選任には「輪番制」と「立候補制」の2つがありますが、多くのマンションでは公平性や受任者の確保という観点から輪番制が採用されています。輪番制の利点は、誰もが順番に役員を担うことで経験の共有や透明性の高い運営が期待できる点です。一方で、消極的な理事が多いと理事会の機能が低下する可能性もあります。立候補制は熱意ある人が積極的に関わることができる反面、長期政権化や理事会の私物化といった課題にも注意が必要です。役員の任期や再任ルールを工夫し、いずれの方法でも健全な管理組合運営を目指すことが大切です。なお、ここで述べた「選任方法」はあくまで候補者の選び方であり、実際の選任は総会の決議によって正式に行われる点も忘れてはなりません。