
マンションの管理体制や修繕積立金の状況、居住者の傾向などを把握するうえで、「マンション総合調査」は非常に貴重な資料です。国土交通省が5年ごとに実施するこの調査は、無作為抽出されたマンションの管理組合および区分所有者を対象とした全国規模の調査であり、マンション管理の現状や課題を把握するための基礎資料となっています。この記事では、令和5年度マンション総合調査の結果をもとに、管理組合が活用すべきポイントを学んでいきます。
調査の概要と信頼性
国土交通省が令和5年度に実施した調査では、全国から1,589の管理組合と3,102人の区分所有者から有効回答が得られました。回収率はそれぞれ37.2%および36.3%であり、全国規模でマンションの実情を把握できる貴重な資料です。
| 調査対象 | 配布数 | 有効回収数 | 回収率 |
|---|---|---|---|
| 管理組合 | 4,270 | 1,589 | 37.2% |
| 区分所有者 | 8,540 | 3,102 | 36.3% |
居住者の高齢化と永住意識の変化
調査結果によれば、70歳以上の世帯主の割合は25.9%と増加傾向にあり、古いマンションほど高齢者の割合が高いことがわかります。一方で、「永住するつもり」と回答した所有者は60.4%で、前回調査より2.4ポイント減少しました。
管理組合運営における課題と外部専門家の活用
管理組合の運営については、「区分所有者の高齢化」や「役員のなり手不足」などの課題が顕在化しています。これを背景に、外部専門家を理事会役員として迎える意向がある管理組合は増加傾向にあります。実際に専門家を活用している割合も増加しており、特に大規模修繕をきっかけとするケースが多く見られます。
修繕積立金の積立状況と今後の見直し
調査では、計画期間25年以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金を設定している割合が59.8%で、前回調査から増加しました。一方で、現在の積立金が計画に対して不足しているマンションは36.6%あり、今後の資金不足が懸念されます。
防災・老朽化・トラブル対応など、幅広い実態が明らかに
- 耐震診断を実施した旧耐震マンションは増加傾向にあります。
- 老朽化について具体的な方向性を出した管理組合は増加しています。
- トラブルの多くは生活音や違法駐車など居住者間のマナー問題です。
- 管理費等の滞納がないマンションは増加しています。
これらの数値からも、老朽化や災害への備え、居住環境の維持に対する意識向上が必要であることが読み取れます。
まとめ
「マンション総合調査」は、全国の管理組合や区分所有者の現状を知ることができる重要な資料です。高齢化や永住意識の変化、役員のなり手不足といった課題は、多くのマンションに共通する問題となりつつあります。特に修繕積立金の不足や老朽化の進行、防災対策の遅れは、今後ますます深刻になると考えられます。自分たちのマンションがこのような全国的な傾向とどのように重なるのか、あるいは異なるのかを見極めるためにも、「マンション総合調査」の結果を読み解き、管理運営のヒントとして活用していくことが重要です。