
マンションの理事会運営では、「継続性」と「透明性」の両立が求められます。けれども、同じ人が何年も理事を続けてしまうと、外からの目が届きにくくなったり、他の住民の関心が薄れてしまったりすることも。この記事では、理事の任期の適切な設定と、業務をうまく引き継ぐための「半数改選」という方法について学んでいきます。
理事の任期はなぜ重要か?
理事の任期をあらかじめ決めておくことで、「万年理事長」状態を避けることができます。確かに、やる気のある方が長く関わることは良い面もありますが、一方で他の住民が参加しづらくなり、理事会が特定の人のものになってしまう恐れもあります。
多くのマンションでは、理事の任期を1〜2年に定め、全区分所有者が順番に関われる体制をつくることが基本です。関わる人が入れ替わることで、新しい視点や改善策も生まれやすくなります。
実際の任期設定の傾向
国土交通省の「平成30年度マンション総合調査」によると、理事の任期は次のような割合で設定されています。
| 任期 | 割合 |
|---|---|
| 1年 | 57.0% |
| 2年 | 36.7% |
| 2年超 | 6.3% |
9割以上のマンションが、2年以内の任期を採用していることがわかります。長すぎる任期は、管理体制の硬直化を招くリスクがあるため、定期的に新陳代謝を促すサイクルが望ましいといえます。
半数改選をおすすめする理由
任期が1年で全員が一度に交代してしまうと、引き継ぎがうまくいかず、理事会の機能が低下するリスクがあります。特に次のような継続的な業務では注意が必要です。
- 滞納者への対応
- 大規模修繕工事の計画
- 長期修繕計画の見直し
こうした課題に対応するには、「2年任期で1年ごとに半数を改選する」体制が理想的です。新旧理事が同時に活動することで、経験と情報が自然に共有され、業務の継続性が保たれます。
半数改選を導入しているマンションの割合
同じ調査では、改選方法の実態も報告されています。
| 改選方法 | 割合 |
|---|---|
| 全員同時改選 | 62.3% |
| 半数ずつ改選 | 25.9% |
| その他 | 11.8% |
半数改選を導入しているマンションは、全体の約4分の1にとどまっています。2年任期に対する心理的な抵抗が背景にあると考えられますが、マンションの規模が大きいほど、半数改選の導入率は高まる傾向にあります。
標準指針における考え方
国土交通省の「マンション管理標準指針」でも、業務の継続性を重視して「半数改選が望ましい」とされています。ただし、これはあくまで「望ましい対応」として示されており、マンションごとの事情をふまえて柔軟に任期設定を考えることが推奨されています。
まとめ
理事の任期が長すぎると、理事会が固定化し、外部からのチェックが働きにくくなります。一方で、毎年全員が交代してしまうと、継続的な課題への対応が難しくなります。そのため、2年任期で1年ごとに半数を改選する「半数改選」制度は、理事会運営の安定と新陳代謝を両立できる方法としておすすめです。もちろん、2年任期に不安を感じる住民もいるかもしれませんが、引き継ぎのルールづくりや専門家のサポートを取り入れることで、スムーズな運営が可能になります。マンションの特性や住民の合意形成の状況に合わせて、理事の任期と改選方法を見直してみてはいかがでしょうか。