
マンションを購入すると、自動的に「管理組合」の一員となります。これは任意の加入ではなく、法律に基づいた制度であり、個人の意思で脱退することはできません。2024年6月には「マンション標準管理規約」が改正され、2025年3月には「区分所有法」の改正案が閣議決定されるなど、マンション管理に関する法制度は大きく変化しています。この記事では、最新の法改正を踏まえ、管理組合の役割や注意点について解説します。
管理組合とは?
マンションの区分所有者は、「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」に基づき、自動的に管理組合を構成します。管理組合は、マンションの共用部分や建物全体の維持管理を行うための団体であり、加入や脱退は法律により制限されています。
管理組合の主な業務
管理組合の業務は多岐にわたりますが、主に以下の3つに分類されます。
1. 管理組合の運営
管理費や修繕積立金を徴収し、建物の維持管理に必要な支出を行います。多くの場合、管理会社に業務を委託していますが、最終的な意思決定は理事会や総会で行われます。
2. 生活ルールの制定
共同生活におけるトラブルを防ぐため、「管理規約」や「使用細則」を定め、ゴミ出しやペットの飼育、騒音などに関するルールを策定します。
3. 建物の維持管理
長期修繕計画を立て、必要な修繕積立金を確保し、外壁補修や屋上防水工事などの大規模修繕を計画的に実施します。
2024年6月の標準管理規約改正のポイント
2024年6月に国土交通省が改正した「マンション標準管理規約」では、以下の点が新たに盛り込まれました。
- 組合員名簿・居住者名簿の作成・更新の仕組み:区分所有者や居住者の情報を把握し、管理の円滑化を図るため、名簿の作成と定期的な更新が求められます。
- 所在不明の区分所有者への対応:所在が判明しない区分所有者に対して、理事長が探索を行い、その費用を請求できる仕組みが導入されました。
- 修繕積立金の見える化:長期修繕計画に基づく積立金の変更予定や現状との差異を総会で説明し、透明性を高めることが求められます。
- EV充電設備や宅配ボックスの設置に関する決議要件の明確化:共用部分への設備設置に関する決議要件が明確化され、設置が容易になりました。
2025年3月の区分所有法改正案の概要
2025年3月に閣議決定された区分所有法の改正案では、以下の点が盛り込まれています。
- 新築時からの管理計画作成義務:分譲事業者が新築時に管理計画を作成し、管理組合に引き継ぐ仕組みが導入されます。
- 利益相反取引の事前説明義務:管理業者が管理組合の管理者を兼ねる場合、自己取引等について区分所有者への事前説明が義務付けられます。
- 修繕等の決議要件の緩和:修繕等の決議は、集会出席者の多数決によることが可能になります。
- 管理不全の専有部分等への対応:裁判所が選任する管理人が管理を行う制度が創設されます。
まとめ
マンションを購入すると、自動的に管理組合の一員となり、法律により脱退は認められていません。管理組合は、建物の維持管理や生活ルールの制定、資金管理など多岐にわたる業務を担っています。2024年6月の標準管理規約の改正や2025年3月の区分所有法改正案により、管理組合の役割や運営方法に大きな変化が生じています。マンションの資産価値や住環境を維持するためにも、最新の法改正を踏まえた管理組合の運営が求められます。