
これまでのマンション管理では、住民が理事を務め、助け合いながら運営していく「自治」のスタイルが一般的でした。しかし今、高齢化や賃貸化の進行により、理事のなり手不足が深刻な問題となっています。そんななか注目を集めているのが、外部の専門家に運営を委ねる「第三者管理方式」です。この記事では、第三者管理方式の仕組みや導入の背景、導入パターンの違いについて学んでいきます。
第三者管理方式とは?——外部の専門家に運営を任せる新しい選択肢
「第三者管理方式」とは、マンション管理士や管理会社などの外部の専門家が理事や管理者として運営を担う方式です。住民による理事会に外部専門家を一部加えるものから、理事会を廃止し外部管理者に全てを任せるものまで、複数のパターンが存在します。
主なメリットは、住民の負担軽減と管理の専門性向上。理事のなり手不足という根本的な課題に対応する手段として、導入を検討するマンションが増えています。
なぜ第三者管理方式が求められるようになったのか?
- 標準管理規約の改正
2011年以降、国交省の標準管理規約では外部専門家の役員就任が認められるようになり、2024年には管理体制強化の改正も実施されました。 - 高齢化と無関心の広がり
高経年マンションでは住民の高齢化が進み、理事を務められる人が減少。管理への無関心も深刻化しています。 - 投資用マンションの増加
遠方のオーナーが多く、理事の就任が難しい。専門家による合理的な管理が求められる傾向があります。 - 「面倒なことはやりたくない」という声
理事の仕事は煩雑で、報酬を払ってでも外部に任せたいという声が多くなっています。
第三者管理方式の3つのパターン
| パターン | 概要 | 理事会の有無 | 外部専門家の役職 |
|---|---|---|---|
| パターン1 | 理事長や理事の一部に外部専門家が就任 | あり | 理事または監事 |
| パターン2 | 管理者は外部専門家、理事会は監督役 | あり | 管理者 |
| パターン3 | 理事会を廃止し、外部管理者が総会の監督を受ける | なし | 管理者 |
ポイント:
パターン1・2は理事会が残るため、住民の一定の関与が求められます。一方でパターン3は完全に外部に委任する形です。
どんなマンションに向いている?
- 理事のなり手がいないマンション
- 同じ人が何度も役員を務めているマンション
- 無関心層が多く、合意形成が難しいマンション
- 管理不全に陥り、立て直しが必要なマンション
第三者管理方式のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 区分所有者の負担軽減 | 専門家への報酬が必要 |
| 専門的で安定した管理運営 | 管理方針に住民が関与しにくくなる可能性 |
| 意思決定の迅速化 | 導入までの合意形成に時間がかかる |
注意点:
外部専門家が管理者となる場合、不正防止のための監査体制の強化が不可欠です。監事を複数にしたり、外部監査人を置くことでガバナンスを確保します。
管理会社が管理者となる場合の注意点
管理会社が日常管理と管理者業務を兼ねると、利益相反のリスクが生じます。たとえば、不要な工事を自社で請け負うようなケースもあるため、外部監査や透明な情報開示を通じて住民の信頼を守ることが大切です。
まとめ
第三者管理方式は、理事のなり手不足という深刻な問題に対する有力な解決策です。専門家による運営は、修繕計画の立案や日常管理をより的確かつ迅速に進めることができるため、高度な管理水準が期待されます。一方で、住民の関与が希薄になるリスクや、管理の透明性が損なわれる可能性も指摘されており、特に管理会社が兼任する場合は利益相反への対応が不可欠です。今後、第三者管理方式はファミリー向けマンションでも広がると見られますが、最終的な責任は管理組合にあるという原則を忘れず、住民の理解を得ながら導入を検討することが大切です。