
マンションでの暮らしは、多くの人が価値観を持ち寄る共同生活です。どんなにルールを定めても、生活音やペット、違法駐車など、日常のマナーに起因するトラブルは後を絶ちません。ちょっとしたすれ違いが、時にマンション全体の空気を悪くするような問題へと発展することもあります。この記事では、国の最新調査結果をもとに、分譲マンションで実際に発生しているトラブルの傾向とその背景について学んでいきます。
居住者間トラブルは全体の6割超に増加
令和5年度のマンション総合調査によれば、分譲マンションにおける過去1年間のトラブルは次のような割合で報告されています。
| トラブルの内容 | 発生割合 |
|---|---|
| 居住者間の行為・マナーに関するもの | 60.5% |
| 建物の不具合に関するもの | 31.7% |
| 費用負担に関するもの | 24.2% |
| 特にトラブルは発生していない | 16.0% |
前回調査(平成30年度)と比較すると、「居住者間の行為・マナーに関するもの」が約4.6ポイント増加し、トラブルの主因としてより顕著になっています。
最も多いのは「生活音」、次いで「違法駐車」「ペット飼育」
居住者間のマナートラブルの具体的な内容は以下のようになっています。
| マナートラブルの具体例 | 割合 |
|---|---|
| 生活音 | 38.0% |
| 違法駐車 | 19.0% |
| ペット飼育 | 18.1% |
「生活音」は個人の感じ方に差があり、簡単に折り合いをつけるのが難しい問題です。フローリング材の遮音性能の基準を定める、掲示物でマナー啓発をするなど、管理規約による明文化が不可欠です。
管理会社と理事会の対応範囲を理解する
居住者間のトラブルは原則として当事者間で解決すべき問題です。管理会社の通常業務には、こうしたトラブルの仲裁や調整は含まれていません。トラブルが深刻化し、対応が求められたとしても、管理会社に一任できるものではないのが実情です。
また、理事会も感情的な対立や法律的な判断を求められる問題には十分に対応しきれないケースが多く、専門家の知見が求められる場面が増えています。
滞納や老朽化もトラブルの種に
トラブルはマナーだけではありません。以下のような管理面での課題も多くのマンションで発生しています。
| トラブル・課題 | 内容 |
|---|---|
| 管理費等の滞納 | 滞納があるマンションは29.7%。放置すると管理体制に深刻な影響が出るため、早期対応が重要です。 |
| 建物の不具合 | 「水漏れ」や「雨漏り」など。定期的な点検・修繕の必要性が浮き彫りに。 |
| 理事のなり手不足 | 高齢化や負担感が原因で、役員の担い手不足が深刻化。外部専門家の活用が選択肢になります。 |
専門家との連携で運営の安定化を図る
管理組合運営における将来の不安として、令和5年度調査では以下のような項目が挙げられています。
| 将来の不安項目 | 割合 |
|---|---|
| 区分所有者の高齢化 | 53.1% |
| 居住者の高齢化 | 44.3% |
| 修繕積立金の不足 | 31.2% |
| 大規模修繕工事の実施不安 | 27.8% |
こうした不安に対応するため、国土交通省の標準管理規約では外部専門家の理事・監事就任を認める規定が設けられています。マンション管理士や弁護士、建築士、税理士などがその対象です。
たとえば、マンション管理士は管理組合の「よろず相談役」として、理事会や管理会社だけでは対応しきれない課題を中立的な立場から支援する役割が期待されています。
まとめ
分譲マンションにおけるトラブルの多くは、建物や設備の老朽化といった物理的な要因に加え、居住者同士のマナーや価値観の違いから発生しています。特に生活音やペット、違法駐車などは受け取り方に個人差があるため、深刻な対立に発展することも少なくありません。こうしたトラブルは本来、当事者間での解決が求められますが、理事会や管理会社に過度な期待を寄せる傾向も見られます。しかし、管理会社の業務範囲には限界があり、トラブルの仲裁役としては十分な対応ができないこともあります。そうした場合に備えて、マンション管理士などの専門家を積極的に活用することが、トラブル解決や不安の軽減に繋がる近道です。多様な価値観を持つ人々が安心して暮らすためには、マナーの啓発と専門的支援のバランスが鍵となります。