
マンションの理事のなり手不足が深刻化するなか、外部の専門家を理事や理事長、または管理者として迎える「第三者管理方式(外部管理者方式)」が注目されています。しかし、導入には管理規約の改正や合意形成、外部専門家との信頼関係の構築が必要で、トラブルなく進めるには段取りが重要です。この記事では、外部の専門家を理事や管理者として迎える際の安全な進め方と手続きを学んでいきます。
第三者管理方式とは?
第三者管理方式とは、マンション管理組合の運営を区分所有者(組合員)以外の外部の専門家に委ねる方式で、主に以下の3タイプがあります。
| 方式 | 特徴 |
|---|---|
| 理事・理事長外部専門家型 | 外部の専門家を理事、理事長などとして迎える |
| 外部管理者+理事会監督型 | 外部専門家を「管理者」に選任し、理事会が監督 |
| 外部管理者+総会監督型 | 理事会を設置せず、総会が外部管理者を監督する |
特に理事長外部専門家型は、役員不足を解消しつつ理事会の形は残す方式で、比較的導入されやすいとされています。
導入までの流れ
以下に、安全かつ円滑に第三者管理方式を導入するための主な流れを示します。
① 理事会での検討開始
理事会が中心となって第三者管理方式の導入について検討を始めます。検討にあたっては、居住者や区分所有者にも「理事の担い手が不足している」などの課題を丁寧に共有し、アンケートや掲示板で広く意見を募ることが重要です。
② 外部専門家の選定
外部専門家は以下の方法で選定されます。
- マンション管理士との顧問契約やコンサル契約を通じて信頼関係を築き、必要に応じて理事長への就任を依頼する。
- 公募を実施する(ただし、手間や選考基準の設定が必要なため現実的には少数)。
- 管理会社などの紹介により実績ある人材を探す。
導入後のトラブルを防ぐためにも、業務内容・報酬・任期などを事前にすり合わせることが必要です。
③ 区分所有者への説明会
正式な総会決議の前に、説明会を開催し、以下のような点を丁寧に説明します。
- 現体制の問題点(役員不足など)
- 外部専門家導入の目的とメリット
- 導入スケジュールと必要な手続き
- 外部専門家候補者の経歴・信頼性
説明会では質疑応答の時間をしっかりと確保し、理解を深めてもらうことが重要です。
④ 導入推進の総会決議(任意)
外部専門家を導入することに対する方針確認として、「導入を検討・推進する」旨の決議を先に行うこともあります(普通決議)。これは義務ではありませんが、最終的な導入決議に向けて合意形成を助ける有効なステップです。
⑤ 正式な導入の総会決議
外部専門家の理事または管理者としての導入には、以下のような複数の議案について総会決議が必要です。
| 議案 | 決議要件 | 補足 |
|---|---|---|
| 外部専門家の役員選任 | 普通決議 | 出席組合員の過半数 |
| 管理規約改正(役員資格の見直し) | 特別決議 | 区分所有者および議決権の4分の3以上 |
| 細則の制定・改正 | 普通決議 | 外部専門家の業務範囲などを定める |
| 契約書の締結 | 普通決議 | 報酬・義務・契約期間などを記載 |
| 予算案(報酬) | 普通決議 | 契約に基づく支出 |
細則に定めておくべき内容
国土交通省の指針では、外部専門家の選任に関して細則で以下のような事項を明文化しておくことが推奨されています。
- 選任方法(選考基準・手続き)
- 任期および解任方法
- 業務内容・職務範囲
- 報酬額と支払い方法
- 理事会での議決権の有無
- 支出に対する制限(例:10万円以上の支出には理事会承認が必要など)
標準管理規約との関係
標準管理規約(2022年版)では以下のように定められています。
第35条(役員)
- 理事および監事は、原則として「組合員(区分所有者)」から選任
- 第4項により、外部専門家を理事・監事とする場合は、その選任方法を細則で定めることが必要
これに基づき、役員の資格要件を見直す規約改正(特別決議)と、細則の制定(普通決議)が必要となります。
まとめ
第三者管理方式の導入は、役員不足や管理の専門性向上といった課題への有効な解決策になり得ますが、導入までの手続きには多くの検討事項や関係者の合意形成が求められます。まずは、理事会が主体となって検討を始め、信頼できる外部専門家と顧問契約などを通じて関係を築くのが現実的です。そのうえで、区分所有者への説明会や総会での丁寧な説明を重ねることで、導入によるトラブルを未然に防ぐことができます。必要な規約や細則の整備を忘れずに、持続可能で健全なマンション管理体制の実現を目指しましょう。