
分譲マンションでは、居住者の個人情報を管理会社が扱うことが一般的ですが、災害時の安否確認などの目的で、理事会が名簿を作成する場面もあります。こうした情報の取り扱いには、個人情報保護法の遵守とプライバシーへの配慮が欠かせません。この記事では、理事会が注意すべき個人情報とプライバシー保護の基本について学んでいきます。
理事会活動におけるプライバシーへの配慮
理事は日常の活動の中で、居住者の職業や家族構成、交友関係など、個人的な情報を知る機会があります。しかし、こうした情報を議事録に記載したり、SNSなどで発信したりすることは、プライバシー侵害につながるおそれがあります。
理事会内で知り得た情報は、理事個人が私的に活用しないこと、また他者に話さないことが大原則です。たとえ善意であっても、他人のプライベートな話題を扱うことは避けましょう。
個人情報保護法とは何か?
個人情報保護法は、個人の権利利益を守るため、個人を特定できる情報の取扱いに厳格なルールを定めた法律です。マンション管理組合が扱う主な個人情報は、以下のとおりです。
| 項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 基本情報 | 氏名、住所、電話番号、緊急連絡先 |
| 会計関連情報 | 管理費・修繕積立金の未収金明細 |
| 災害対応情報 | 安否確認名簿、家族構成、医療情報等(必要な範囲) |
これらの情報は正当な目的に限って取得・利用し、鍵付きの書庫などで厳重に保管する必要があります。他の居住者への口外は厳禁です。
マンション管理組合も個人情報保護法の対象に
2022年4月1日施行の法改正により、「保有する個人情報が5000人以下の団体は適用外」とする旧制度は正式に廃止されました。そのため、マンション管理組合もすべて個人情報保護法の適用対象となっています。
管理組合は「個人情報取扱事業者」として、次のような責任を持つことになります。
- 個人情報の取得・利用目的を明確にする
- 安全管理措置(保管・アクセス制限等)を講じる
- 本人からの開示・訂正請求等に対応する体制を整備する
これらは、法人格の有無に関係なく、実質的に個人情報を扱う団体すべてに求められる義務です。
災害対策名簿の作成時にも注意が必要
災害時の安否確認や救援活動を想定して、管理組合が居住者名簿を作成することは有意義ですが、その際にも目的と保管方法を明確化し、本人の同意を得ることが原則です。
名簿作成にあたっては以下の点を守りましょう:
- 事前に利用目的を住民に説明し、同意を得る
- 閲覧範囲を理事会内など必要最小限に限定
- 配布や公開は行わず、安全に保管
まとめ
理事会は、マンション全体の円滑な管理運営を行う上で、住民の情報に接する機会が多くあります。しかし、その情報はあくまで業務上必要なものであり、個人のプライバシーに踏み込むことは避けなければなりません。2022年の法改正により、管理組合も個人情報保護法の適用対象となっており、個人情報の取り扱いに関する明確なルールと管理体制が求められます。理事は法律の理解を深めるとともに、住民の信頼を損なわないよう、慎重な情報管理を心がけることが重要です。プライバシー保護は、安心・安全なマンション運営の基盤です。