
マンションの築年数が経過すれば、そこに暮らす住民も同様に年齢を重ねていきます。近年、築30年以上の「高経年マンション」が急増する中で、居住者の高齢化が進行し、管理組合運営に深刻な影響を及ぼしています。この記事では、マンションの高齢化問題の実態と、その対策について学んでいきます。
マンション居住者の高齢化が進行中
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によれば、全国の分譲マンション戸数は約704万戸と推計されており、国民の1割以上が居住する重要な居住形態となっています。同調査によると、マンション居住者のうち70歳以上の割合は25.9%と、前回調査(2018年)の22.2%から増加しています。特に1984年以前に建築された高経年マンションでは、70歳以上の居住者が55.9%と過半数を占めています。
高齢化がもたらす管理組合の課題
管理組合役員のなり手不足
理事会を中心とするマンション管理組合は、本来、区分所有者の自治によって運営されるべきものですが、住民の高齢化が進むことで、役員を引き受けられる人が減り、運営が停滞するリスクが高まっています。高経年マンションでは、区分所有者の高齢化や非居住化(賃貸・空き住戸化)が進行し、管理組合の役員の担い手不足や、総会運営や集会の議決が困難等の課題を抱えているものが多いと指摘されています。
管理運営の消極化
高齢者の多くは年金収入となり、経済的余裕が少ないことも課題です。修繕費の増額提案に対しても「あと何年住むか分からない」といった理由で非協力的な姿勢をとられるケースも見られます。結果として、マンションの資産価値や安全性に関わる重要な修繕が先送りされがちです。
高齢化対策として若い世代を取り込むには
住みたいと思われるマンションづくりがカギ
高齢化の予防策として最も有効なのは、若い世帯が住みたいと思うマンションにすることです。たとえば、「自分が育ったマンションに戻りたい」と思わせるような魅力づくりや、新たな入居者に選ばれる環境づくりが求められます。
注意したい点:コミュニティの押し付けは逆効果
高齢者には好評な「サークル活動」や「お茶会」なども、若い世代にとっては煩わしいと感じられることも。現代の若者は、趣味や価値観が合う人とネット上でつながることを重視する傾向が強いため、無理なコミュニティ形成は逆効果になることがあります。
今すぐできる管理組合のアクションとは?
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 建物の魅力向上 | 近代的な設備や清掃の行き届いた共用部など、ハード面を整える |
| 柔軟な理事会運営 | 外部専門家やコンサルタントを活用し、経営的視点で運営 |
| 情報発信 | ホームページやSNSを活用し、マンションの魅力を広くアピール |
| 多様な参加方法 | 理事会に参加しやすい仕組み(オンライン併用、サポート体制など)を整備 |
まとめ
築古マンションの多くで高齢化が進み、管理組合の運営や修繕の意思決定に深刻な影響が出ています。特に、郊外で立地の魅力が乏しいマンションでは、対策を怠れば人が住まなくなるリスクすらあります。重要なのは、高齢化が進んでから対応を考えるのではなく、若い世代を呼び込むための工夫を早めに始めることです。そのためには、若い世代の価値観を理解し、経営的な視点からマンション運営を見直すことが必要です。理事会だけでは限界がある場合には、外部コンサルタントの活用も有効な選択肢です。マンションという「住まい」を未来につなげていくために、今こそ行動が求められています。