
マンションの管理規約を変更する際、すべてが多数決で決められるわけではありません。特定の組合員に「特別の影響」が及ぶ場合には、その組合員の事前承諾が必要とされることがあります。ですが、この「特別の影響」の範囲は曖昧で、実際の運用に迷うケースも少なくありません。
この記事では、「特別の影響」の判断基準と、事前承諾が必要となる場面について学んでいきます。
「特別の影響」がある場合は事前承諾が必要
管理規約の制定・変更・廃止には、区分所有者数と議決権の各4分の3以上の賛成(特別決議)が必要です。しかし、変更内容が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすときは、その該当組合員の事前承諾もあわせて必要となります。これは、少数の権利者を守るためのルールです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 特別決議 | 組合員総数および議決権総数の各4分の3以上の賛成 |
| 特別の影響がある場合 | 対象となる組合員の事前承諾が必要(正当な理由がなければ拒否できない) |
「特別の影響」とはどんなもの?
法律や判例では、「特別の影響」とは受忍限度を超える不利益を指すとされています。たとえば、「少し不便になった」「使い勝手が変わった」といった程度では足りず、明確にその組合員の既得権を侵害したり、生活や権利に実質的な損害が及ぶ場合が該当します。
「特別の影響」と判断される可能性のある事例
以下のようなケースでは、「特別の影響」に該当する可能性があります。
| ケース | 内容 |
|---|---|
| 店舗営業の禁止 | 専有部分で店舗営業していたが、住居専用に変更する場合 |
| 無償駐車場の廃止 | 特定の人だけが持っていた駐車場の無償使用権を削除する場合 |
| 管理費の変更 | 使用頻度に応じて管理費負担を変えるが、著しく不公平な場合 |
いずれも、合理的理由なく不利益を与える変更であるとき、特別の影響があると判断されます。
判断が難しいときは専門家の意見を
「これは特別の影響にあたるのか?」という判断は、理事会や管理組合だけでは難しいこともあります。そんなときには、管理会社のフロント担当者や、マンション管理士・弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
マンションの管理規約を変更する際、特定の組合員の権利に「特別の影響」が及ぶと判断される場合には、その組合員の承諾が必要となります。ただし、その影響の範囲に明確な基準はなく、個別のケースにより異なります。特別の影響とされるのは、正当な理由なく特定の区分所有者の権利を侵害するような不利益を伴う場合です。承諾が必要かどうか判断に迷うときは、管理会社や専門家に相談し、該当する組合員とは事前に丁寧に話し合いを行うことが、トラブルを未然に防ぐための最良の方法となります。