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エレベーター改修工事の委託先選定ガイド|失敗しない業者の見極め方とコスト概算


エレベーター改修工事の委託先選定ガイド|失敗しない業者の見極め方とコスト概算

マンションやオフィスビルにおいて、日々の移動を支えるエレベーターは、いわば建物の「心臓」とも言える重要な設備です。しかし、どんなに優れた機械であっても、経年による劣化は避けられません。一般的にエレベーターの物理的な耐用年数は25年から30年程度と言われており、この期間を経過した設備は、安全性維持のために抜本的な更新工事(リニューアル)を検討すべき時期に差し掛かります。

古い設備を使い続けることは、故障のリスクを高めるだけでなく、最新の耐震基準や安全装置が未搭載であることによる不安も残ります。また、省エネ性能の観点からも、最新機種への更新は大きなメリットがあります。

しかし、いざ改修を計画しようとすると、「数ある業者の中からどこを選べば正解なのか」「適正な費用はいくらなのか」「工事中に気をつけるべきトラブルは何か」といった多くの疑問に直面することになります。

この記事では、マンション管理組合の役員様やビルオーナー様を対象に、エレベーターのリニューアル工事を成功に導くための業者選定ノウハウを学んでいきます。資産価値と安全を守るためのパートナー選びにお役立てください。

エレベーター更新工事を依頼する施工会社の選び方

改修工事の成否は、パートナーとなる施工会社の質で決まると言っても過言ではありません。ここでは、業者選定において特に注視すべき3つの核心的なポイントを解説します。

「メーカー系」と「独立系」の特性を比較検討する

エレベーターの保守・改修を行う業者には、大きく分けて「メーカー系」と「独立系」の2種類が存在します。それぞれの特性は大きく異なるため、その違いを明確に理解しておく必要があります。

「メーカー系」と「独立系」の特性を比較検討する

【メーカー系業者】

エレベーター製造メーカーの直系子会社やグループ企業を指します。自社ブランドの製品に対する圧倒的な知識と、純正部品の供給ルートを持っているのが強みです。

  • メリット: 開発元の図面やデータを保有しているため、極めて信頼性が高く、スムーズな工事が期待できます。
  • デメリット: 費用は高額になる傾向があります。また、他社製のエレベーターからの切り替えには消極的あるいは非対応な場合があります。

【独立系業者】

特定のメーカー系列に属さず、あらゆるメーカーの機種に対応可能なメンテナンス専門業者です。

  • メリット: メーカー系に比べてコストパフォーマンスに優れています。また、複数のメーカーが混在する施設でも一括管理ができるなど、柔軟な対応が魅力です。独自の部品調達網を持ち、安価な提案が可能です。
  • デメリット: 最新機種や特殊な独自技術が使われている場合、対応範囲が限られることがあります。

安心とブランド力を優先して予算をかけるか(メーカー系)、コスト削減と柔軟性を重視するか(独立系)、管理組合やオーナーの方針に合わせて選択することが重要です。

施工実績と技術レベルの高さを見極める

エレベーターは人命を預かる設備である以上、施工品質に妥協は許されません。そのため、業者の選定にあたっては「どれだけの現場をこなしてきたか」という実績と技術力が問われます。

リニューアル工事は新設工事とは異なり、既設の建物構造に合わせて機器を入れ替える高度な技術が必要です。施工ミスは重大な事故や頻繁な故障に直結します。したがって、類似の建物や同規模の工事実績が豊富にあるかを確認することが不可欠です。

具体的には、以下の点を確認してください。

  • 過去の施工件数: 具体的な数字や事例集を見せてもらう。
  • 有資格者の在籍数: 「昇降機等検査員」や「電気工事士」などの国家資格を持つスタッフが十分に確保されているか。

経験豊富な業者は、予期せぬトラブルへの対応力も高く、安全管理体制もしっかりと構築されています。

見積もりの明瞭さと工事後のサポート体制

最終的な決定を下す際は、複数社から見積もりを取り(相見積もり)、その内容の透明性と、工事完了後のサービス体制を比較します。

見積もりの透明性

リニューアル費用は高額です。提示された金額が適正か判断するために、2〜3社からの見積もり取得は必須です。「工事一式」のような大雑把な記載ではなく、詳細な内訳が出ているかをチェックしましょう。

  • 撤去費、機器代、据付工事費、内装費、電気工事費などが細分化されているか。
  • 不明瞭な項目があれば遠慮なく質問し、納得できる回答が得られるか。これにより、後から「想定外の追加工事」として費用請求されるリスクを減らせます。

アフターサービスの充実度

エレベーターは「工事して終わり」ではありません。リニューアル後も数十年にわたりメンテナンスが必要です。

  • 工事後の保守契約の内容は適切か。
  • 故障時の緊急対応体制(24時間365日対応など)は整っているか。長期的なパートナーとして信頼できるかどうか、保守・点検の体制まで含めて評価しましょう。

改修手法別:エレベーターリニューアル費用の相場観

エレベーターの更新費用は、どの程度まで部品を入れ替えるかという「工事範囲」によって大きく変動します。予算計画を立てる上で知っておくべき、主要な3つのパターンの費用目安を紹介します。

フルリニューアル(全撤去・新設)

既存のエレベーター設備(かご、レール、モーター、制御盤など)をすべて撤去し、完全に新しい製品に入れ替える手法です。

  • 費用目安: 1基あたり 約1,500万~2,000万円
  • 特徴: 性能、安全性、省エネ性、乗り心地のすべてが新設同様に向上します。ただし、工期が長く、費用も最も高額になります。

準撤去リニューアル

レールや枠組みなど、耐久性が高く流用可能な部品はそのまま使い、モーター(巻上機)や制御盤、かご室、ロープなどの主要部分を新品に交換する手法です。

  • 費用目安: 1基あたり 約1,200万~1,700万円
  • 特徴: フルリニューアルに近い性能向上を実現しつつ、使える部品を残すことでコストと工期をある程度圧縮できます。

制御リニューアル(制御盤等の部分更新)

エレベーターの頭脳にあたる「制御盤」やモーターなどを中心に更新し、かご室や扉などは既存のものを使用する手法です。

  • 費用目安: 1基あたり 約500万~700万円
  • 特徴: 最小限の投資で、故障率の低減や着床精度の向上を図れます。アナログなリレー式制御からデジタル制御へ移行することで、省エネ効果も期待できます。

※上記の金額はあくまで一般的な目安です。エレベーターの積載量(定員)、停止する階数、速度、さらには内装デザインへのこだわりや、地震時管制運転装置などのオプション追加によって、実際の見積額は変動します。高層マンションや商業ビルの大型機ではさらに高額になるケースもあります。

トラブルを未然に防ぐための重要注意事項

リニューアル工事は、居住者やテナントの生活に直接影響を及ぼす一大事業です。円滑な進行のために、発注側が意識しておくべき3つのリスク管理ポイントを解説します。

長期間の「エレベーター停止」への対策

工事期間中、エレベーターは完全に停止します。生活の足が奪われることへの対策は最重要課題です。

主要機器の交換を伴う場合、小規模な制御リニューアルであっても5日〜10日程度、フルリニューアルなら数週間にわたって利用不可となる場合があります。

特にエレベーターが1基しかない物件では、高層階の住人、高齢者、身体の不自由な方にとって死活問題となります。

  • 周知徹底: 全戸へのチラシ配布、掲示板での告知を数ヶ月前から行う。
  • 支援策の検討: 階段昇降機のレンタル導入、荷物運搬のサポートスタッフ配置、ゴミ出しルールの緩和など、管理組合主導で具体的な支援策を準備することが望ましいとされています(国土交通省等のガイドライン参照)。

工事に伴う「騒音・振動・臭い」への配慮

工事現場となる昇降路(シャフト)は音が響きやすく、解体時の金属音やハツリ作業の振動は、予想以上に建物全体に伝播します。

特に在宅ワークをしている居住者や、近隣の住民にとっては大きなストレス要因となり、苦情の原因になりかねません。

  • 事前挨拶: 近隣住民への事前説明と挨拶回りを徹底する。
  • 工程管理: 音の出る作業は日中の特定時間帯に限定する、土日祝日は休工にするなどの配慮を施工会社と調整しておくことが重要です。

契約内容の精査と「追加費用」リスクの回避

契約書に判を押す前に、見積もり条件と契約条項を隅々まで読み込む必要があります。特に注意したいのが、工事が始まってから発覚する不具合による追加請求です。

解体してみて初めて、ピット内の漏水や鉄骨の腐食などが見つかるケースは珍しくありません。

  • 詳細調査: 契約前に可能な限り詳細な現地調査を依頼する。
  • 契約条項の確認: 「予期せぬ補修が必要になった場合の費用負担区分」を明確にしておく。あるいは、予備費を予算に組み込んでおくなどの対策を講じましょう。安易な契約は、後のトラブルの火種になります。疑問点はすべて解消してから着工の合意を行う姿勢が大切です。

まとめ:賢い選択で資産価値を高めるリニューアルを

エレベーターのリニューアル工事を成功させる鍵は、「適正な相場の把握」と「信頼できるパートナー選び」に集約されます。

老朽化を放置することはリスクでしかありません。適切な時期に、適切な工法で改修を行うことは、建物の安全性を確保するだけでなく、資産価値の維持・向上に直結する重要な投資です。

本記事で解説した通り、メーカー系と独立系の特徴を比較し、複数の見積もりを詳細に分析すること。そして、工事期間中の住民生活や契約リスクまで見据えた総合的な判断を行うことが、後悔しないリニューアルへの近道です。

「安かろう悪かろう」に陥らず、かといって不要なコストをかけすぎず、安全性とコストのバランスが取れた最適なプランを選択してください。

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