
マンションには「専有部分」と「共用部分」があり、そのどちらにも当てはまるようなグレーゾーンが存在します。それが「専用使用権のついた共用部分」、たとえばバルコニーや専用庭などです。普段は個別に使っているため誤解されがちですが、実は共用部分という扱い。このような曖昧な位置づけは、費用負担や管理責任をめぐるトラブルの火種にもなります。この記事では、「専用使用部分」の正しい理解と管理・費用負担の基本について学んでいきます。
専用使用権のついた共用部分とは?
バルコニーや専用庭、玄関扉、窓ガラスなどは、マンション全体で所有している「共用部分」に該当しますが、特定の住戸のみが使う「専用使用権」が設定されています。
| 部位 | 区分 | 使用者 |
|---|---|---|
| バルコニー | 共用部分(専用使用権あり) | 当該住戸の区分所有者 |
| 専用庭 | 共用部分(専用使用権あり) | 当該住戸の区分所有者 |
| 玄関扉・窓枠・窓ガラス | 共用部分(専用使用権あり) | 当該住戸の区分所有者 |
共用部分でありながら排他的に使える特別なスペースであり、通常の共用廊下などとは扱いが異なります。
管理責任と費用負担は誰がする?
原則として、以下のように分かれます。
| 状況 | 責任者 | 備考 |
|---|---|---|
| 日常的な掃除や網戸の張り替えなど | 専用使用権者(区分所有者) | 自己責任・自己負担 |
| バルコニー防水などの計画修繕 | 管理組合 | 修繕積立金等を使用 |
| 窓ガラスの破損(使用中の事故) | 区分所有者 | 共用部分でも自己負担 |
| 突発事故(飛来物など) | 管理組合(保険対応) | 管理組合加入の保険を利用可能 |
管理規約で明確にすべき理由
トラブルの多くは「責任の所在」と「費用負担の範囲」が曖昧なことが原因です。そこで重要なのが、管理規約や使用細則による明文化です。
- 標準管理規約第14条では、バルコニーや専用庭などについて、専用使用権があることが明記されています。
- 第21条では、通常の使用に伴う管理については、専用使用者が行うことが定められています。
もし現行の管理規約に記載がなければ、理事会にて管理会社や専門家の支援を受けて、管理規約の見直しを検討することが望まれます。
まとめ
マンションの「専用使用権のついた共用部分」の範囲は、日常的な管理は「専用使用権を持つ区分所有者」がおこなうことが原則ですが、しばしば、その費用負担をめぐって、誰が負担をするのか「管理組合なのか、専用使用部分を利用する住人なのか」で揉めてトラブルに発展することがあります。そこで、管理規約に「専用使用権のついた共用部分」の箇所と「費用負担の区分」を明確に記載してしておくことでトラブルを未然に回避します。こうした記載がない場合には、理事会で管理会社の担当者(フロントマン)やマンション管理士の支援を受けて、管理規約の見直しを検討しましょう。