
分譲マンションでは、住民全員が公平に「管理費」や「修繕積立金」を負担することが、快適で安全な住環境を維持するための基本です。しかし実際には、これらの費用を滞納する方が一定数おり、理事会が対応に頭を悩ませる場面も少なくありません。この記事では、滞納が発生した場合の理事会の対応方法と予防策について学んでいきます。
管理費や修繕積立金の滞納の実態
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、3ヶ月以上の滞納があるマンションは29.7%にのぼります。さらに、1~2ヶ月の短期滞納も含めると、多くのマンションで何らかの滞納問題が発生している状況です。
| 滞納状況 | 該当するマンションの割合 |
|---|---|
| 3ヶ月以上の滞納あり | 29.7% |
| 短期滞納(3ヶ月未満)含む | さらに多くの割合 |
※出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果(とりまとめ)」
管理費等の滞納が発生する原因
滞納の背景には以下のような様々な事情があります。
| 滞納の主な原因 | 内容 |
|---|---|
| 経済的な理由 | 失業や収入減などで支払いが困難 |
| うっかりミス | 単なる支払い忘れ |
| 相続による手続き中 | 所有者の変更手続きが未了 |
| 認知症など判断力の低下 | 本人の認識不足や対応困難 |
滞納の原因を正確に把握することが、その後の適切な対応につながります。
管理費等の滞納を防ぐためにできること
理事会としては、以下のような滞納予防策を講じることが重要です。
- マンション内のコミュニティを活性化させる
- 会計報告を透明化し、住民の納得感を高める
- 支払い方法(口座振替など)の整備をすすめる
とくに、心理的に滞納しにくい雰囲気づくりは、予防策として大きな効果があります。
滞納者への督促の方法と理事会の役割
滞納が発生した場合は、できるだけ早期に事務的・定型的に対応することがポイントです。
| 滞納期間 | 対応内容 |
|---|---|
| 2ヶ月経過 | 理事会名で督促状を送付 |
| 4ヶ月経過 | 弁護士名で内容証明郵便を送付 |
このようにあらかじめ督促のルールを理事会で取り決めておくことで、誰が理事になってもスムーズに対応できます。
また、管理会社(フロント)との連携も重要です。理事会が定期的に管理会社から提出される「未収金明細書」を確認し、対応状況をチェックすることで、対応の遅れを防ぐことができます。
まとめ
「管理費」や「修繕積立金」の滞納は、マンションの運営に深刻な影響を与える問題です。資金不足による管理不全や、住民間の不公平感の増大を招き、やがては管理組合全体の信頼低下につながるおそれもあります。滞納は長期化するほど対応が困難になり、理事会の業務負担や法的対応にかかるコストも増加します。だからこそ、管理会社との連携を密にし、迅速かつルールに基づいた対応を行うことが重要です。日頃から理事会が月次報告書の未収金情報をチェックし、必要な督促が行われているかを確認することで、早期発見と対応につながります。滞納問題を放置せず、理事会と管理会社が協力しながら、トラブルの芽を早めに摘むことが、円滑なマンション管理の鍵となります。