
マンションでの生活には、火災や自然災害、盗難、水漏れといった様々なリスクが潜んでいます。こうしたトラブルに備えて、管理組合では損害保険を活用するのが一般的です。保険に加入しておくことで、いざというときに高額な修繕費を組合財産から一時的に負担する必要がなくなり、スムーズな対応が可能になります。この記事では、マンション管理組合が加入している損害保険の基本的な内容と補償範囲について学んでいきます。
共用部分を守る「マンション総合保険」
管理組合が加入する損害保険は、多くの場合、「マンション総合保険」と呼ばれるもので、建物の火災・落雷・爆発などに備えた基本補償のほか、賠償責任にも対応する仕組みになっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | マンションの共用部分や附属施設 |
| 主な補償 | 火災、落雷、風災、水漏れなどによる損害の現状復旧 |
| 法的根拠 | 標準管理規約第24条により、区分所有者の承認を前提に理事長が契約・保険金請求 |
標準管理規約第24条では、管理組合が火災保険等を締結することを区分所有者が承認する旨、また理事長が保険金の請求・受領を代理することが定められています。
被害の多くは「漏水」から起こる
実際の保険金支払いで最も多いのが、給排水管からの漏水事故です。老朽化したマンションでは配管トラブルが起こりやすく、下階の壁紙や家具への損害賠償が必要になります。これに対応できるのが賠償責任補償です。
また、マンション全体が火災で全焼するリスクは少ないため、保険料を抑えるために補償割合(付保割合)を50%程度に設定する例もあります。復旧に必要な最低限の保険金額を見極めた設計が求められます。
より手厚くするなら「オプション保険」
基本補償に加えて、以下のようなオプション保険の加入が検討されることもあります。
| 保険の種類 | 補償の内容 |
|---|---|
| 施設賠償保険 | 共用部分の設備に起因する第三者への損害(例:壊れた手すりによる転落) |
| 個人賠償保険 | 個人が他人に与えた損害(例:上階住戸からの水漏れ、ペットの咬傷) |
| 地震保険 | 地震や津波などに起因する損害を補償(※加入は任意) |
特に地震保険は加入率が年々増加傾向にあり、2024年度の住宅金融支援機構のデータによれば、マンションでも加入率が40%を超える地域が増えています。
管理標準指針でも保険加入が「標準対応」
国土交通省のマンション管理標準指針では、管理組合が火災保険等に加入することを「標準的な対応」と明記しています。万が一の事故で共用部分を修繕する際、合意形成に時間がかかったり、一時金徴収が必要となることを避けるためです。
指針のコメントでは、「火災等に見舞われた際に共用部分の復旧を行う場合や、共用部分からの水漏れ等に対する損害賠償を行う場合には、保険による迅速な支出が望ましい」とされています。
実際の加入状況
| 保険の種類 | 加入割合 |
|---|---|
| 掛け捨て型火災保険 | 69.1% |
| 積立型火災保険 | 22.2% |
| 合計(火災保険加入) | 91.3% |
※最新の全国調査は公表されていませんが、保険会社各社によると、2020年代以降も加入率はおおむね90%超の水準で推移しています。
まとめ
分譲マンションでは、火災や自然災害、漏水といった予期せぬ事故や損害への備えとして、管理組合が「マンション総合保険」に加入するのが一般的です。この保険は建物の修復費用をカバーするだけでなく、共用部分に起因する賠償責任にも対応しており、特に漏水事故への備えとして重要な役割を果たします。標準管理規約や管理標準指針にもとづき、理事長が区分所有者を代理して保険金を請求・受領できる体制が整えられており、円滑な対応が可能です。保険料を適正に抑える工夫や、必要に応じたオプション保険の活用も有効です。保険契約はマンション管理の基盤を支える重要な制度であり、住民の安全・安心な生活のためにも、理事会としてしっかりと管理・見直しを行うことが求められます。