
マンションにおける「専有部分」とは、住戸の所有者が個別に所有し管理する空間のことを指しますが、実際には「壁の中」や「玄関扉」「窓」など、共用部分との境界が曖昧なケースも少なくありません。専有部分と共用部分の違いを正しく理解しておくことで、修繕やトラブル時の対応がスムーズになります。この記事では、マンションの専有部分の範囲と、注意すべき境界の考え方について学んでいきます。
専有部分とは?基本の考え方
マンションの専有部分とは、「天井・壁・床に囲まれた空間」であり、各区分所有者が住まいとして利用している居室部分を指します。これは標準管理規約にも定義されており、建物の構造体(躯体)を除いた内側の仕上げ部分が専有部分という扱いです。
| 部位 | 専有部分 | 共用部分 |
|---|---|---|
| 壁・天井・床 | 表面の仕上げ材(クロス・フローリング等) | 躯体部分(コンクリート構造体など) |
| 玄関扉 | 内側の塗装、鍵(錠) | 扉本体、外側塗装 |
| 窓 | なし(全体が共用) | 窓枠・ガラス・網戸 |
| 配管・配線 | 専有部分内の分岐から室内側 | 共用部分内や他住戸と共有する部分 |
玄関扉や窓の「専用使用権」に注意
専有部分と似ているものに「専用使用部分」があります。例えばバルコニーや窓などがそれに該当し、共用部分でありながら特定の住戸が独占的に使用することができるようになっています。
しかし、これらはあくまでも共用部分ですので、自由に改装・交換することはできず、破損や不具合があった場合の修繕負担については、使用者負担とされることもあります。管理規約や細則の内容を事前に確認することが重要です。
専有部分と共用部分の境界の考え方3つ
マンションによって、専有部分と共用部分の境界をどのように考えるかには次の3つの考え方があります。
- 内壁説:天井・壁・床の構造部すべてを共用部分とし、その内側の空間だけを専有部分とする
- 壁芯説:壁の中心線までを専有部分とみなす
- 上塗り説:構造体は共用部分、仕上げ材(上塗り部分)は専有部分とする
標準管理規約では、「上塗り説」を採用しています。つまり、壁や床の表面は専有部分として、リフォームやクロスの張替えなどが自由に行える範囲とされています。
リフォームや設備交換時の注意点
専有部分であっても、管理組合のルールを無視して勝手に改修を行うことはできません。
| ルール項目 | 内容 |
|---|---|
| 用途制限 | 居住用のみ可。店舗や事務所利用は禁止されているケースが多い |
| ペット飼育 | 管理規約や細則で「飼育禁止」や「種類・頭数制限」あり |
| リフォーム | 届出制や事前承認制。音・振動や共用部分への影響に注意が必要 |
専有部分であっても自由度は100%ではなく、マンション全体のルールに則った利用が求められます。
まとめ
例えば水漏れが発生した際、その原因が専有部分にあるのか、共用部分にあるのかによって修理費用の負担者が異なります。そのため、住まいのどこからどこまでが専有部分で、どこからが共用部分なのかを正確に理解することが、トラブル防止の第一歩です。こうした範囲はマンションごとの管理規約で定められており、規約の文言が不明確であれば、理事会で協議し明文化する必要があります。とくに「玄関扉」「窓」「配管」など、トラブルの起きやすい部分については、管理組合と住民の双方が正しい知識を共有し、必要に応じて専門家の助言を受けながら明確なルール整備を進めることが、快適で安心なマンション生活につながります。