
マンションの維持・管理には欠かせない「管理費」と「修繕積立金」ですが、全国の多くのマンションでこれらの費用を滞納する区分所有者が存在しています。管理組合としては、早期の把握と適切な対応が求められるところです。この記事では、令和5年度マンション総合調査(国土交通省)のデータをもとに、滞納の実態とその対応策について学んでいきます。
管理費・修繕積立金の滞納があるマンションの割合
| 滞納状況 | 該当する管理組合の割合(令和5年度) |
|---|---|
| 滞納がない | 69.3% |
| 滞納がある | 30.7% |
令和5年度の調査では、滞納がまったくないと回答した管理組合は69.3%であり、依然として約3割のマンションで滞納が発生していることが分かります。前回(平成30年度)の調査では滞納なしが62.7%だったため、改善傾向にあるものの、決して油断できる状況ではありません。
出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果概要」(2024年3月公表)
築年数が古いマンションほど滞納リスクが高い
調査によると、築40年以上のマンションでは滞納がある割合が41.2%と非常に高く、築年数が新しいマンションと比べて滞納のリスクが高い傾向が明確に表れています。これは、高齢化や空き住戸の増加、管理不全の影響が指摘されています。
滞納者への対応策と実施状況
| 措置内容 | 実施率(複数回答可) |
|---|---|
| 文書等による催促 | 77.2% |
| 管理会社による対応 | 46.1% |
| 弁護士への相談・依頼 | 6.3% |
| 訴訟(支払請求等) | 3.2% |
| 少額訴訟 | 1.6% |
| 特に対応していない | 7.5% |
文書等での催促が最も一般的な対応策となっており、次いで管理会社への対応依頼が続きます。一方で、法的措置(訴訟・少額訴訟など)に踏み切るケースは少数にとどまっています。
管理会社と理事会の役割分担
多くの管理委託契約では、滞納から6ヶ月までは管理会社が対応し、その後は理事会の役割となるルールが一般的です。これは、国土交通省の「標準管理委託契約書」の規定に準じています。
「滞納者対応=管理会社の仕事」と考える理事も少なくありませんが、実際には理事会が主体となって最終対応を行う必要があることを正しく理解しておく必要があります。特に、理事長が直接滞納者宅を訪問したり、法的措置の検討を行う場合、精神的・時間的な負担が大きくなるため、早めの対応が肝心です。
まとめ
令和5年度マンション総合調査によると、「管理費・修繕積立金」の滞納がまったくないマンションは69.3%にとどまり、3割以上のマンションで滞納が発生しているという現状があります。特に築年数が古いマンションでは滞納リスクが高まり、長期化するケースも見られます。滞納への対応は主に文書による催促や管理会社との連携で行われますが、最終的には理事会の責任で対応する場面も多くあります。まずは滞納の早期把握と、管理会社との緊密な連携によって、問題が深刻化する前に対応を進めることが重要です。健全なマンション管理のためにも、理事会は滞納の実態を正確に理解し、計画的な対応を心がけましょう。