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マンションの防火管理者:業務内容、資格取得、任期、報酬、外部委託の現状


マンションでの防火管理者の外部委託

マンションにおける防火管理者の選任は、消防法により義務付けられています。しかし、理事のなり手不足と同様に、防火管理者のなり手が見つからないことが課題となっています。この記事では、防火管理者の業務内容や資格取得方法、任期、報酬、外部委託の現状について、最新の情報をもとに解説します。


防火管理者の選任が必要なマンション

消防法では、以下の条件に該当するマンションにおいて、防火管理者の選任が義務付けられています。

  • 共同住宅で収容人員が50人以上
  • 店舗など不特定多数の人が出入りする用途がある建物で、収容人員が30人以上

収容人員の算出は、住戸の間取りに応じた想定居住者数を基に行います。例えば、1K・1DK・1LDK・2DKは2人、2LDK・3DKは3人、3LDK・4DKは4人、4LDK・5DKは5人といった基準があります。これらを用いてマンション全体の収容人員を計算し、選任義務の有無を判断します。


防火管理者の主な業務

防火管理者の主な業務は以下の通りです。

1. 消防計画の作成と届け出

防火管理者は、マンションの実情に即した消防計画を作成し、所轄の消防署に届け出る必要があります。この計画には、避難経路や消防設備の配置、火災時の対応手順などが含まれます。計画が未作成または未提出の場合、法令違反となる可能性があります。

2. 消防訓練の実施

消防法では、年に1回以上の消防避難訓練の実施が義務付けられています。訓練は、居住者が火災時の対応を理解し、迅速に行動できるようにするための重要な機会です。訓練内容を工夫し、居住者の参加を促すことが望まれます。

3. 日常の防火管理業務

防火管理者は、避難経路の障害物の有無を確認したり、消防設備の点検結果を確認し、必要に応じて改善措置を講じるなど、日常的な防火管理業務を行います。これらの業務は、管理会社と連携して進めることが一般的です。


資格取得と講習の最新情報

防火管理者になるためには、所定の講習を受講し、修了する必要があります。講習には「甲種」と「乙種」があり、建物の用途や規模に応じて選択します。

  • 甲種防火管理者講習:2日間(約10時間)の講習。
  • 乙種防火管理者講習:1日間(約5時間)の講習。

近年、オンライン講習が導入され、受講の利便性が向上しています。たとえば、一般財団法人日本防火・防災協会では、甲種防火管理新規講習をオンラインで受講でき、受講期間は12日間、受講料は8,000円(税込)です。


任期と報酬の実態

防火管理者の任期に関する法的な規定はありませんが、管理組合の運営上、1年ごとの交代が望ましいとされています。しかし、資格取得の負担やなり手不足から、同じ人が長期間担当するケースも多く見られます。

報酬については、支給の有無や金額はマンションによって異なります。ある調査では、防火管理者に報酬を支払っている管理組合は全体の7.6%で、平均年額は15,598円、中央値は15,000円でした。

報酬を支給する場合は、「防火管理者に関する細則」を定め、報酬額や支給方法を明文化することが望ましいです。


外部委託の現状と注意点

防火管理者のなり手不足を解消するため、外部の専門業者に業務を委託するケースが増えています。外部委託では、消防計画の作成、巡回点検、訓練の実施、消防署との対応など、実務を伴った防火管理が行われます。

ただし、名義貸しのような形態は法令違反となるため、実際に業務を遂行する信頼できる業者を選定することが重要です。また、契約内容を明確にし、費用対効果や緊急時の対応体制なども含めて比較検討することが求められます。


まとめ

マンションは消防法において「共同住宅」として位置づけられ、防火管理体制の整備が求められています。防火管理者の不在や形骸化は、火災時に重大な被害をもたらすだけでなく、理事長をはじめとする管理組合役員の責任問題にもつながります。

防火管理者の選任には講習の受講が必要であり、業務には一定の負担があります。そのため、報酬制度や外部委託の導入を通じて、適切な防火管理体制を維持することが重要です。防火管理者は単なる名義上の役職ではなく、住民の命を守る重要な役割であることを忘れてはなりません。

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