
マンションの大規模修繕工事は、「12年周期が基本」と言われることが多いですが、本当にすべてのマンションで12年ごとに行う必要があるのでしょうか?最近では、技術の進歩や建物の状況を踏まえ、より長い周期で実施する例も増えてきました。この記事では、大規模修繕工事の適切な周期の考え方について学んでいきます。
大規模修繕工事の目的と特徴
マンションの大規模修繕工事は、建物や設備の老朽化に対応するために行われる定期的な大規模工事です。一般的には外壁の補修や屋上防水、鉄部の塗装などが対象となります。
しかし、各部位の耐用年数は異なり、本来であれば都度個別に修繕すべきです。とはいえ、マンションでは住民の生活に配慮する必要があるため、足場の設置を一度にまとめてコスト削減を図りつつ、複数箇所の修繕を同時に行うことが現実的です。これが大規模修繕工事の意義でもあります。
「12年周期」は必須ではない
国土交通省の「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」では、大規模修繕は「通常は10年以上の周期」で実施されるとしています。12年周期はあくまでも目安であり、マンションの立地環境や設計仕様、設備の状態によって最適なタイミングは変わります。
| 修繕周期の目安 | 内容 |
|---|---|
| 約10~12年 | 外壁塗装、屋上防水、鉄部塗装など |
| 約20年~30年 | 給排水管、電気設備、エレベーター更新など |
修繕周期を延ばすと得なのか?
修繕周期を延ばせばその分費用を先送りできるため「お得」と思われがちですが、設備の劣化や予防保全の観点からは一概にそうとは言えません。例えば、12年周期で計画的に進めれば、3回目の大規模修繕時にすべての設備更新を終えることも可能ですが、15年周期にすると更新のタイミングがずれて非効率になる可能性もあります。
管理会社の提案を鵜呑みにしない
管理会社が提示する長期修繕計画に基づき、周期的に修繕を提案されることが多いですが、必ずしもすべての提案が必要な工事とは限りません。実施前には専門家による劣化診断を行い、本当に必要な工事を見極めることが重要です。
技術の進歩と修繕周期の見直し
近年では、防水や外装材の耐用年数が伸びており、以前よりも長持ちする工法や材料が採用されています。たとえば、アスファルト防水では20年程度もつ製品も登場しており、従来の12年周期を見直す動きも広がっています。
まとめ
大規模修繕工事の実施周期は「12年ごと」とされることが多いものの、それがすべてのマンションに適しているとは限りません。近年では、20年周期で問題ないという専門家の声や、雑居ビルでの修繕事例も増えています。しかし分譲マンションでは、高齢化や住民の意識、終の棲家としての価値観などにより、早めの修繕を望むケースも少なくありません。工法の進歩により耐用年数も変化している中で、適切な修繕周期はマンションごとに異なるものです。理事会や修繕委員会を中心に、専門家の診断や住民の意見を踏まえたうえで、柔軟かつ慎重に検討していくことが大切です。