
マンションの資産価値を維持するために欠かせないのが「長期修繕計画」です。計画を立てることで、部材や設備の耐用年数に応じた修繕時期を予測し、費用をあらかじめ見込むことができます。ただし、管理会社が作成する長期修繕計画には注意が必要です。建物診断を行わずに机上で作成された計画は、現実と乖離している場合があります。
この記事では、建物診断を伴った長期修繕計画の必要性と、見直しのポイントについて学んでいきます。
長期修繕計画とは?修繕費の見通しを立てるための基本
マンションは、外壁、屋上防水、給排水管、エレベーターなど、部位ごとに劣化スピードや修繕周期が異なります。そのため、場当たり的な対応ではなく、将来を見据えて修繕を行うための計画が必要です。
長期修繕計画では、次のような要素をあらかじめ想定しておきます。
| 主な修繕対象 | 一般的な修繕周期 | 修繕の内容例 |
|---|---|---|
| 外壁塗装 | 約12年 | 塗装の塗り替え、ひび割れ補修 |
| 屋上防水 | 約12~15年 | 防水シートの更新、防水層再施工 |
| 給排水設備 | 約30年 | 配管の更新・更生 |
| エレベーター | 約30年 | 制御盤や巻上機の更新 |
そして、これらにかかる推定費用を算出し、修繕積立金を適切に設定することが極めて重要です。
長期修繕計画の前提となる「建物診断」とは
長期修繕計画を有効に活用するには、建物の現状を正しく把握することが前提です。劣化の進行具合や修繕が必要な部位を明らかにするためには、専門家による建物診断を行うことが欠かせません。
しかし、実際には管理会社が無償で作成する長期修繕計画では、現地確認すら行われないことが多くあります。図面や過去資料のみで計画が作成されるケースが多いため、信頼性は高くありません。
そのため、以下のような流れで外部の専門業者に有償で依頼することを検討すべきです。
- 建物診断(目視・打診・部分解体など)
- 劣化状況の分析
- 改修優先度の判定と修繕内容の決定
- 長期修繕計画の策定
「性能向上工事」も忘れずに計画に盛り込む
最近では、バリアフリー化や省エネ対応など、性能向上を目的とした工事も長期修繕計画に含めることが推奨されています。たとえば、高齢化が進んだマンションであれば、エントランスの段差解消やエレベーター操作盤の低位置化などが求められます。
現状維持だけでなく、居住者のニーズに応じた改良も視野に入れることが、今後のマンション管理において重要です。
計画期間は30年が基本。2回の大規模修繕工事を想定
国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」では、計画期間は最低でも30年を目安に設定することが示されています。これは、一般的に大規模修繕工事の周期が12年程度であるため、2回以上の工事を含む必要があるからです。
また、設備更新が重なるタイミング(たとえば給排水管とエレベーターの更新が同時期)では、多額の費用が集中します。そのため、資金が不足しないように、これらを含めた費用シミュレーションをしておく必要があります。
まとめ
分譲当初に設定される修繕積立金は、販売を促進するために低く抑えられているケースがほとんどです。このままでは将来的な資金不足を招くリスクがあります。できるだけ早期に長期修繕計画を見直し、現状の建物に即した建物診断を踏まえて、必要な修繕内容とその費用を正確に把握しましょう。そして、それをもとに修繕積立金を適切な額に設定することが大切です。とはいえ、長期修繕計画はあくまでも「予測」であり、修繕の必要性は都度、専門家の診断で見極めることが重要です。管理会社に任せきりにせず、理事会として主体的に動くことが、住まいの安心と資産価値の維持につながります。