
高経年マンションでは、老朽化した受水槽の更新時期を迎え、直結給水方式への変更を検討する管理組合が増えています。直結給水方式は衛生面の向上やスペースの有効活用など多くのメリットがある一方、災害時のリスクやコスト面での課題もあります。この記事では、受水槽方式と直結給水方式を比較しながら、変更のメリット・デメリットについて学んでいきます。
なぜ今、直結給水方式への変更が注目されているのか?
背景として、以下のような変化が挙げられます。
- 受水槽の老朽化による更新時期の到来
- 水道本管の圧力向上により、高層階まで対応可能に
- 増圧ポンプの技術進化により、15階建て程度のマンションでも直結が可能に
技術の進歩により、従来は難しかった高層マンションでも直結給水方式が実現可能となり、選択肢のひとつとして現実味を帯びてきました。
直結給水方式と受水槽方式の比較表
| 比較項目 | 直結給水方式 | 受水槽方式 |
|---|---|---|
| 水の衛生面 | 高い:水道管から直接供給 | 定期清掃が必要:管理不備で水質悪化の恐れ |
| 維持管理コスト | ポンプの保守費用が発生 | 点検・清掃・更新費用が発生 |
| スペース活用 | 貯水槽撤去で跡地利用可 | 貯水槽の設置スペースが必要 |
| 災害時の対応力 | 断水時は水の供給が即停止 | 貯水槽内の水を一時的に使用可能 |
| 設備の安全性 | 高置水槽撤去で耐震性向上 | 高置水槽の構造が地震時に不安定な要素 |
| 導入コスト | 配管交換などの初期工事費が高額な場合も | 比較的低コスト(既設設備を維持する場合) |
直結給水方式に変更するメリット
1. 衛生的な水を供給できる
貯水槽を介さずに水道本管から各住戸に直接給水するため、水質劣化のリスクが低減され、安心して水を使うことができます。
2. スペースの有効活用
受水槽を撤去すれば、そのスペースを駐輪場や物置など、用途に応じて再利用することが可能です。土地が限られる都市部のマンションでは特に有効です。
3. 維持管理コストの削減
受水槽の点検・清掃・更新費用が不要となり、ランニングコストの一部を削減できます。
4. 地震時の安全性向上
屋上にある高置水槽を撤去することで、建物の揺れへの耐性が高まり、構造的安全性が向上します。
直結給水方式に変更するデメリット
1. 初期工事費用が高額になることも
水道本管からの引き込み管を太い配管に交換する必要があり、想定外の工事費用が発生する可能性があります。まずは地域の水道局に相談が必要です。
2. 災害時の備えがない
受水槽がないため、断水時に生活用水を確保できないというデメリットがあります。非常用の水の備蓄が必要です。
3. ポンプの維持費がかかる
中高層階への給水には増圧ポンプの設置が必要であり、その点検や交換の費用負担が発生します。長期的なコスト削減効果が出ない場合もあります。
導入前に確認すべきポイント
- 地域の水道本管の水圧は対応可能か?
- 引き込み管の口径は足りているか?
- マンションの階数と構造に適しているか?
- 管理組合内の合意形成はできるか?
- 災害時の対応策は十分か?
まとめ
近年では、受水槽を撤去して直結給水方式に変更するマンションが増えています。特に衛生面の向上やスペースの有効活用といったメリットは魅力的です。一方で、災害時の備えが不十分になることや、初期費用の高さといったデメリットも存在します。地域や建物の条件によって最適な選択は異なるため、まずは専門家の意見を聞いたうえで水道局への確認や住民へのアンケートなどを行い、丁寧に合意形成を図ることが大切です。住民の暮らしに直結する重要なインフラの変更ですので、慎重かつ計画的に進めましょう。