
かつては一戸建てへの住み替えを前提に購入されていたマンションも、いまや「終の棲家」として選ばれる時代になりました。人生をともにする住まいとして、マンションの維持管理にはこれまで以上に高い意識が求められています。この記事では、マンションに一生住み続けるための定期メンテナンスと大規模修繕工事の長期計画について学んでいきます。
マンションは「終の棲家」に。だからこそ、資産価値の維持が重要
現在、日本全国の分譲マンションストック数は約665.5万戸。人口の約1割にあたる約1,500万人がマンションで暮らしています。国土交通省の調査では、「永住するつもり」と回答するマンション居住者は6割を超えており、住み替え前提の一時的な住まいという位置づけは過去のものとなりつつあります。
こうした中で求められるのが、長期的に安心して暮らすための維持管理です。とりわけ築年数が進むと、快適性を保つだけでなく「資産としての価値」も意識した修繕やメンテナンスが不可欠となります。
新築から1回目の大規模修繕工事までの流れ
| 時期 | 主な対応内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 引渡し~1年 | アフターサービス点検(1回目) | 専有・共用部の不具合を確認 |
| 2年目 | アフターサービス点検(2回目) | 点検の有無はデベロッパー次第 |
| ~10年目 | 保証対象:構造体・屋上防水等 | 無償修繕はこの間がラストチャンス |
| ~12年目 | 第1回大規模修繕工事を実施 | アフター保証終了後、修繕費発生 |
1・2年目のアフターサービス期間を最大限に活用することで、デベロッパー負担による無償補修を受けられ、のちの修繕費用を削減できます。アフター点検を行わないデベロッパーもあるため、管理組合が主導して点検を申し入れる姿勢が大切です。
また、アフターサービスの対象範囲はマンションごとに異なるため、購入時に配布される「アフターサービス基準書」の確認も欠かせません。
長期修繕計画で、2回目以降の大規模修繕に備える
12年目以降は、おおよそ12年ごとの周期で第2回、第3回と大規模修繕が続いていきます。このころから経年劣化による修繕範囲が広がり、費用負担も重くなっていきます。
そして第4回・第5回あたりでは「修繕」か「建て替え」かという重要な判断を迫られることもあります。将来の社会情勢や法律の影響もあるため、今からの判断は難しいですが、どちらの選択をするにしても十分な資金を確保しておくことがカギとなります。
資金計画の要は「長期修繕計画」の見直し
長期にわたるマンションの維持管理には、現実的な資金計画が欠かせません。国のガイドラインでは、おおむね5年に一度の見直しが推奨されています。
計画の見直しでは、次の点に着目しましょう。
- 修繕対象部位の劣化状況の把握
- 修繕時期や周期の調整
- 修繕積立金の増額検討
- 専門家(コンサルタント)による診断の導入
先を見据えた定期的な見直しこそが、資産価値を守る最大の防衛策となります。
まとめ
マンションを終の棲家とする意識が高まる今、資産価値と快適な住環境を保つためには、長期的な視点での維持管理が重要です。新築時にはアフターサービスを最大限活用し、2年目までに不具合の対応を依頼することが将来の修繕費削減につながります。10年目までは主要構造部分の無償補修が受けられる最後の機会であり、第1回目の大規模修繕を見据えた重要な期間となります。12年目以降は大規模修繕が定期的に必要となり、やがては建て替えを検討する段階に入ります。そのときに慌てないためにも、5年に一度の長期修繕計画の見直しを通じて、確実な資金準備と適切な管理を続けていくことが求められます。