UPDATE|玄関扉・窓・配管の帰属を標準管理規約で整理
「玄関扉は専有?共用?」「窓ガラスが割れたら誰の負担?」「配管はどこまで個人で修理できる?」──リフォームや漏水事故のたびに問題になる専有部分と共用部分の境界を、標準管理規約第7条と「上塗り説」の考え方から整理。リフォーム時に管理組合の許可が必要なケースまで実務者向けに解説します。
分譲マンションでは、同じ建物の中に「専有部分」と「共用部分」が混在し、リフォームや設備交換のたびに「どこまでが自分の所有物で、どこから管理組合の持ち物か」が問題になります。玄関扉は専有部分か共用部分か、窓ガラスは誰の費用で直すのか、配管はどこまで個人負担か――これらはすべて、マンション標準管理規約に定められた基本ルールを理解していれば判断できます。
本記事では、専有部分と共用部分の境界の考え方、玄関扉・窓・配管の具体的な帰属、リフォーム・工事時に管理組合の許可が必要なケースまで網羅して解説します。
こんな方におすすめの記事です
- 住戸のリフォームを計画している区分所有者
- 漏水事故・修繕費の負担範囲で迷っている理事会
- 窓サッシ・玄関扉の交換を検討している管理組合
- 管理規約の配管条項を見直したい新任理事
専有部分とは|区分所有権の対象となる住戸内の空間
マンション標準管理規約(単棟型)第7条は、専有部分を「区分所有権の対象となる住戸」と定義しています。つまり、自分が所有権を持ち、自由に使用・処分できる範囲のことです。条文では次のように整理されています。
マンション標準管理規約(単棟型)第7条
対象物件のうち区分所有権の対象となる専有部分は、住戸番号を付した住戸とする。
2 前項の専有部分を他から区分する構造物の帰属については、次のとおりとする。
一 天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。
二 玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする。
三 窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。3 第1項又は前項の専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のものは、専有部分とする。
境界の考え方|マンションは「上塗り説」を採用
住戸を区分する天井・床・壁の境界をどこに置くかには、法律学上3つの考え方があります。
| 境界説 | 考え方 |
|---|---|
| 内壁説 | 境界部分(天井・床・壁)はすべて共用部分。その内側の空間のみが専有部分 |
| 壁芯説 | 境界部分の厚さの中心線までを専有部分、それより外側を共用部分とする |
| 上塗り説 | 構造体(コンクリート等)は共用部分、その上塗り部分(壁紙・塗装など)は専有部分。標準管理規約が採用 |
マンション標準管理規約は「上塗り説」を採用しています。そのため、室内の壁紙の張り替えや壁面の塗り替えは専有部分の変更として自由にできますが、コンクリート躯体に穴を開ける・構造壁を取り壊すといった工事は共用部分の変更にあたり、管理組合の承認が必要です。
玄関扉|錠と内部塗装は専有、扉本体は共用
玄関扉は、標準管理規約により「錠および内部塗装部分」が専有部分、それ以外(扉本体・外部塗装)は共用部分と明確に区分されています。この区分を踏まえると、居住者が自由にできる工事と、管理組合の承認が必要な工事が分かれます。
居住者が自由にできること(専有部分)
- 錠(シリンダー)の交換:防犯性能向上のための変更が可能
- 扉の室内側の塗装・色替え:内部塗装部分は専有のため自由
- ドアノブ・ドアガードの交換:扉本体に穴を開けない範囲で可能
管理組合の許可が必要なこと(共用部分に影響)
- 扉の外側の色変更:マンション全体の美観に関わるため不可
- ダブルロック追加のための穴あけ:扉本体(共用部分)に加工が必要
- 扉本体の交換:扉そのものの交換は共用部分の変更
- 覗き穴(ドアスコープ)の新設:扉本体に穴を開けるため管理組合の許可要
マンション全体の美観を守る観点から、玄関扉の外観は管理組合が統一管理する必要があります。ダブルロック追加などセキュリティ向上のための工事は、管理組合の許可を得たうえで施工することが基本です。
窓・窓枠・窓ガラス・網戸|すべて共用部分
住戸内にあっても、窓枠・窓ガラス・網戸は標準管理規約により共用部分とされています。したがって、居住者が自由に交換することはできず、大規模修繕工事や共用部分の計画修繕として管理組合が一括で管理するのが原則です。
「専用使用権」という考え方
窓・窓枠・バルコニー・ルーフバルコニーなどは、共用部分でありながら「特定の住戸が専用的に使用する権利」が認められています。これを専用使用権と呼びます。通常の使用によって破損した窓ガラスは、その住戸の負担で修理することになるのはこのためです(管理組合が共用部分として直すのではなく、使用権を持つ住戸が直す)。
窓の断熱性能向上やサッシ交換を希望する場合は、管理組合の承認を得た上で、マンション全体の統一仕様に沿った施工を行う必要があります。近年は省エネ基準や補助金制度との関係から、管理組合として一斉にサッシ更新を行うケースも増えています。
配管・配線|設置場所と維持管理状況で判断
配管・配線は、専有部分と共用部分の境界が特に曖昧になりやすい領域です。標準管理規約の考え方では、「専有部分の専用に供される設備のうち、共用部分内にある部分以外は専有部分」とされます。
| 配管の種類 | 一般的な帰属 |
|---|---|
| 縦管(共用立管) | 共用部分。管理組合が修繕 |
| 縦管から住戸内への分岐点まで | 共用部分として扱うケースが多い(規約で明記されるべき) |
| 住戸内の横引き管 | 専有部分(住戸内の壁・床下にある部分) |
| 水栓・給湯器本体 | 専有部分 |
ただし、古いマンションでは縦管から住戸内への分岐部分がコンクリートに埋設されているケースもあり、「どこまでが専有で、どこから共用か」がマンションごとに異なります。こうした曖昧な部分は漏水事故が発生したときに費用負担の争いを生みやすく、事前に管理規約・細則で明確に定めておくことが強く推奨されます。
リフォーム・工事時の実務上の注意点
住戸内のリフォームでも、共用部分に影響する工事は管理組合の承認が必要です。実務で問題になりやすい工事例を整理します。
- 床の張り替え:遮音性能を満たすフローリング材を指定している管理組合が多い。規約・細則の確認必須
- 間取り変更:構造壁(耐力壁)の撤去は原則不可。施工前に管理組合へ工事申請が必要
- 給排水管の更新:縦管から分岐部の工事は共用部分に及ぶため、管理組合の許可と施工業者の事前協議が必要
- エアコン室外機の設置:バルコニーは共用部分の専用使用権範囲のため、設置場所・配管ルートに制約
- インターホン交換:共用設備と連動するため、住戸単独での機種変更は不可
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まとめ|境界を知ることはマンション管理の出発点
マンションの専有部分と共用部分の境界について、ポイントを整理すると以下のとおりです。
- 標準管理規約は「上塗り説」を採用:構造体は共用、上塗り部分(壁紙・塗装)は専有
- 玄関扉は錠と内部塗装のみ専有:外観変更や扉本体への加工は管理組合の許可要
- 窓枠・窓ガラス・網戸は共用部分:ただし専用使用権により破損時は住戸負担で修理
- 配管は縦管が共用、住戸内横引き管が専有:古いマンションでは境界が曖昧な場合があるため規約確認必須
- リフォーム時は管理組合へ事前申請:床・間取り・配管・エアコン・インターホンは特に注意
境界を正しく理解しておくことは、後々の漏水事故・修繕費トラブルを未然に防ぐマンション管理の基礎体力です。リフォームや設備交換を計画するときは、まず管理規約・使用細則を確認し、共用部分に影響する工事なら管理組合への事前申請を徹底しましょう。
