マンション大規模修繕の談合とは、本来競い合うはずの業者が裏で示し合わせ、受注する会社や工事価格を事前に決めてしまう行為です。組合は競争による値下げの機会を失い、割高な工事をつかまされやすくなります。まず談合の仕組みを知ることが、適正な発注への第一歩になります。
談合は独占禁止法が禁じる「不当な取引制限」にあたります。なかでも受注調整は「入札談合」と呼ばれます。罰則の対象であり、公正取引委員会が取り締まる行為です。組合側に違法性があるわけではありませんが、知らないうちに被害者になりやすい点が問題です。
修繕の談合とはどういう行為か
談合は、複数の業者が競争を装いながら裏で結託する行為です。表向きは相見積りや入札の形を取ります。しかし実際には、誰が受注するかが事前に決まっています。
主な特徴は次のとおりです。
- 表面上は複数社が見積りや入札に参加している
- 受注する会社が裏で決められている
- 落選する会社はわざと高い金額を出す(当て馬)
- 結果として競争が働かず、価格が下がらない
組合から見ると、複数社から見積りを取っているので競争しているように見えます。ここに談合の巧妙さがあります。形式だけの相見積りは、談合を見抜けません。
よくある手口
談合の手口にはいくつかの型があります。代表的なものを挙げます。
- 受注予定者を順番に決め、他社は協力する(輪番)
- 落選社が意図的に高値を出し、本命を引き立てる
- 見積りの内訳や様式を業者間ですり合わせる
- 第三者の立場の者が受注先の調整役を担う
特に注意したいのが、本来は中立であるはずの立場の者が調整に関わる型です。大規模修繕では、調査や仕様作成、施工会社の選定補助を担う設計コンサルが関与する方式があります。この調整役が業者側と利益でつながると、組合は気づかないまま割高な発注へ誘導されることがあります。
相見積りを取っていても、参加業者の顔ぶれや見積りの作り方を一方の関係者が握っていると、競争は形だけになります。誰が業者を集めたかという点に注意が必要です。
組合が被る不利益
談合の被害は、工事費の上振れだけにとどまりません。組合が被りやすい不利益を整理します。
- 競争が働かず、工事費が割高になりやすい
- 不要・過剰な工事項目が紛れ込みやすい
- 工事の質を価格で比べる判断材料が得られない
- 修繕積立金が想定より早く目減りする
- 次回以降の修繕計画にも費用面で影響が及ぶ
費用の上振れは、その一回の工事で終わりません。積立金が想定より減れば、将来の工事や資金計画にも響きます。談合は長期の資金繰りに関わる問題でもあります。
なぜ修繕で談合が起きやすいのか
大規模修繕には、談合が入り込みやすい事情があります。
第一に、情報の非対称性です。組合の理事は工事の専門家ではありません。適正な価格や工事範囲を判断しにくく、専門家の説明に頼りがちになります。
第二に、発注の機会が少ない点です。大規模修繕は十数年に一度です。理事も任期で入れ替わります。経験が組合内に蓄積されにくく、業者側との知識の差が開きやすくなります。
第三に、選定の窓口が限られる点です。業者集めや見積り取りまとめを一つの関係者に任せると、その関係者の意向で顔ぶれが決まります。チェックが効かなければ、調整の余地が生まれます。
談合を疑うときの着眼点
完全に見抜くのは難しいものの、注意のサインはあります。
- 見積金額が各社で不自然に近い、または横並びになっている
- 一社だけ極端に高く、当て馬に見える
- 参加業者をすべて同じ関係者が紹介している
- 内訳の様式や項目立てが各社でそっくり
- 値引き交渉に応じる気配がまったくない
こうしたサインが一つあるだけで談合と断じることはできません。ただし複数重なるときは、発注の進め方を見直す合図と考えてよいでしょう。組合側で業者を独自に加える、内訳を細かく確認するといった対応が有効です。
まとめ
修繕の談合は、競争を装いながら受注者や価格を裏で決める行為です。組合は割高な工事をつかまされ、積立金の目減りという長期の不利益も被ります。形式だけの相見積りでは談合を見抜けません。誰が業者を集め、誰が調整役を担っているかに目を向けることが大切です。次の段階として、相見積りの正しい取り方や、選定窓口の中立性を確かめる方法を順に確認していくとよいでしょう。
