マンション大規模修繕の談合は、本来中立であるはずの設計コンサルが受注調整に関わると起こりやすくなります。コンサルが施工会社と利益でつながると、組合は気づかないまま割高な発注へ導かれます。本稿は、どこで利害がねじれ、なぜ談合が生まれるのかを順を追って整理します。
ここで扱うのは設計監理方式という進め方です。適正に運用すれば組合の力になる方式です。問題は方式そのものではなく、中立性が崩れたときに何が起きるかにあります。仕組みを理解すれば、防ぐ手立ても見えてきます。
設計監理方式の基本構図
まず、設計監理方式の役割分担を確認します。大規模修繕の発注方式には、主に二つあります。
| 方式 | 担い手 | 特徴 |
|---|---|---|
| 設計監理方式 | コンサルと施工会社が別 | コンサルが調査・仕様・選定補助・監理、施工は別会社 |
| 責任施工方式 | 一社が一括 | 調査から施工まで同じ会社が担う |
設計監理方式では、設計コンサルが調査・仕様作成・施工会社の選定補助・工事監理を担います。施工は別の会社が行います。コンサルが組合側に立ち、施工会社をチェックする役回りです。この分業が機能すれば、組合は専門知識を補えます。
どこで利害がねじれるのか
問題は、コンサルが組合だけでなく施工会社の側とも利益でつながったときに起きます。
設計監理方式では、コンサルが施工会社を集め、見積りを取りまとめる立場に立ちやすくなります。組合は工事の専門家ではないため、誰を呼ぶか、どの金額が妥当かをコンサルの説明に頼りがちです。ここに調整の余地が生まれます。
コンサルが受注先をあらかじめ決め、参加業者がそれに合わせて見積りを出せば、相見積りは形だけになります。落選する会社はわざと高い金額を出します。組合から見れば複数社が競っているように見えても、結果は事前に決まっています。
受注調整からバックマージンへ
受注調整が成立すると、その見返りが動きます。
2026年6月に報じられた事件では、設計コンサルが受注調整に関与し、受注した業者から受注額の数パーセント程度、報道では5%前後をバックマージンとして得ていたとされます。報道時点では公取委の方針段階でしたが、この構図が本件の特徴とされました。
仕組みを順に並べると次のようになります。
- コンサルが受注予定の施工会社を事前に決める
- 他社は協力し、当て馬として高い見積りを出す
- 組合は形だけの相見積りで受注先を承認する
- 受注額にマージンが上乗せされ、割高になる
- コンサルが受注業者から見返りを受け取る
中立であるべきコンサルが見返りを受け取ると、工事費を抑える動機が失われます。むしろ受注額が大きいほどコンサルの取り分も増えます。組合の利益とコンサルの利益が逆を向く点が、この構図の危うさです。
鍵は「誰の利益のために業者を選んでいるか」です。コンサルが施工会社から見返りを得ていれば、選定はもはや組合のためのものではありません。利害の向きを見ることが、構図を読み解く要になります。
なぜ組合は見抜きにくいのか
この構図は、外から見えにくい特徴を持ちます。
第一に、形式は完全に正規です。相見積りも入札も書類もそろっています。手続きの不備として表に出にくいのです。
第二に、情報の非対称性です。理事は十数年に一度しか大規模修繕を経験しません。適正価格も工事範囲も独力で判断しにくく、専門家の説明に頼らざるを得ません。
第三に、窓口の一元化です。業者集めも見積りも一者が握れば、外部のチェックが届きません。調整役と監理役を同じ者が兼ねると、自分の仕事を自分で点検する形になります。
構図を断つための着眼点
設計監理方式を否定する必要はありません。中立性を保つ手立てを備えれば、有効な進め方です。組合が取れる対応を挙げます。
- コンサルと施工会社の間に資本・取引の関係がないかを確認する
- コンサルの報酬体系を確かめ、受注額に連動していないかを見る
- 業者集めをコンサルに一任せず、組合側でも候補を加える
- 同じ条件で複数社から見積りを取り、内訳と単価を比べる
- 選定の経過を記録し、可能なら第三者に確認してもらう
これらは、コンサルを疑うためではなく、構図がねじれていないかを確かめるための手順です。中立性が保たれていれば、設計監理方式は組合の判断を支えます。
まとめ
談合は、中立であるべき設計コンサルが受注調整に関わり、施工会社と利益でつながったときに起こりやすくなります。形は正規の相見積りでも、受注先が事前に決まっていれば競争は働きません。受注額に乗ったマージンが、コンサルへの見返りに回ります。防ぐ鍵は、利害の向きと中立性を確かめることです。方式を否定せず、確認の視点を持つことが、組合を割高発注から守ります。
