管理者管理方式は理事会の負担を減らせる進め方です。ただし便利さの裏側に弱点もあります。住民の目が届きにくくなり、費用が増え、利益相反が起きやすくなる点です。導入する前に、こうしたリスクと備えをそろえて理解しておく必要があります。
管理者管理方式とは、組合の運営を担う「管理者」を理事会の外に置く進め方です。管理会社や管理士、弁護士などが管理者になります。理事の負担が軽くなる反面、運営の中身が見えにくくなります。この記事では、その弱点を一つずつ整理します。
チェック機能が低下する
最大の弱点は、住民や理事による監督が効きにくくなる点です。理事会管理では、複数の理事が日常的に内容を確認します。管理者管理方式では、その日常的な確認の役割が外部の管理者に移ります。
結果として、次のような状態が起きやすくなります。
- 契約や発注の内容を住民が把握しにくい
- 問題に気づくのが総会のときだけになる
- 管理者の判断を検証する人がいなくなる
国土交通省は、管理者方式に関するガイドラインで、監事による監督や外部監査の活用を求めています。チェックの担い手をあらかじめ決めておくことが、この弱点への備えになります。
住民が無関心になりやすい
運営を任せきりにすると、住民の関心が薄れていきます。理事の当番が回ってこないため、自分の建物の状態を知る機会が減ります。
無関心が進むと、総会の出席率が下がります。提案された議案がそのまま通りやすくなり、住民の意思が反映されにくくなります。管理者方式を導入しても、総会への参加と情報共有の仕組みは残しておく必要があります。
費用が増える
外部の管理者には報酬が別途かかります。理事が無償で担っていた仕事を委託するため、その分の費用が上乗せされます。
報酬の金額は型や業務範囲によって変わります。委託する前に、業務範囲と報酬の対応関係を契約書で確認してください。
費用が増えること自体は、負担軽減と引き換えの面もあります。問題は、支払う費用に見合う監督が伴っているかどうかです。費用だけが増え、チェックが効かない状態は避けなければなりません。
利益相反が起きやすい
管理会社が管理者になる方式では、利益相反のリスクが高まります。管理者として組合のために判断する立場と、自社の利益を求める立場が、同じ会社の中で重なるためです。
この懸念は理屈の上だけのものではありません。国土交通省が2023年に行った実態調査では、次のような状況が報告されました。
- 組合の通帳と印鑑をともに管理会社が保管しているケースが約76パーセント
- 管理者としての契約を結んでいないケースが約51パーセント
通帳と印鑑を一つの会社がまとめて保管していると、資金の動きを組合側が確認しにくくなります。管理者としての契約がないまま業務が進んでいる例も少なくありません。リスクが現実に起きうることを示す数字です。
備えとして、ガイドラインでは次のような対応が挙げられています。
- 通帳と銀行印を分けて保管する
- 外部監査を活用し、自己監査を禁止する
- 一定額以上の契約は組合の承認を必要とする
2026年4月に施行される改正区分所有法でも、管理者が工事を発注する際の利益相反取引について、事前の説明を義務づける方向が示されています。
特定の管理者に依存しすぎる
運営を一人の管理者に集中させると、その存在に依存する状態になります。担当者が交代したり、契約を解約したりするときに、運営が滞るおそれがあります。
規約に特定の管理者の固有名詞を書き込むと、解任や交代がしにくくなります。解任の手続きと任期を契約と規約で明確にしておくことが、依存への備えになります。管理者の選任と解任は、区分所有法第25条により総会の決議で行います。この決議の道筋を残しておくことが大切です。
まとめ
管理者管理方式は理事の負担を減らせる進め方ですが、チェックの低下、無関心化、費用増、利益相反、外部依存という弱点を抱えます。国土交通省の2023年の実態調査では、通帳と印鑑をともに管理会社が保管するケースが約76パーセント、管理者としての契約がないケースが約51パーセントと報告され、リスクが現実に起きうることが示されています。導入の際は、監事や外部監査による監督、通帳と印鑑の分離保管、承認制、解任手続きの明確化といった備えをそろえて、便利さと安全のバランスをとってください。
