地下ピット式の機械式駐車場を平面化する際、最もシンプルでわかりやすいのが「埋め戻し工法」です。
「穴があるなら、土で埋めてしまえばいい」という発想で、古くから行われてきた方法ですが、他の工法(鋼製平面化工法など)を勧める業者からは「埋め戻しは危険だ」と否定的な説明をされることがあります。
この記事では、埋め戻し工法の仕組みとメリットを解説するとともに、業者の説明の裏側と、本当に注意すべきリスクについて中立的な立場から解説します。
埋め戻し工法の仕組みとメリット
埋め戻し工法は、機械式駐車場の装置をすべて解体・撤去した後、残った地下ピットの空間に大量の砕石(土砂)を投入して埋め尽くし、その上をアスファルトやコンクリートで舗装して平面駐車場にする工法です。
メリット1:初期費用が安く済む
鉄骨を組み上げる鋼製平面化工法などと比べ、砕石を投入して舗装するだけというシンプルな構造のため、初期費用を安く抑えやすいのが最大の特徴です。
メリット2:メンテナンスがほぼ不要(恒久的)
一度完全に埋めてしまえば、鉄のように「サビる」ことがありません。
そのため、数年ごとの再塗装といった定期的なメンテナンス費用がかからず、長期的なトータルコストを最も安く抑えられる可能性があります。
「沈下して危険」という説明をどう受け止めるか
鋼製平面化を専門とする業者の中には、「埋め戻し工法は、中の土砂が沈み込んで地盤沈下するから危険です」と説明するケースがあります。
管理組合としては「危険」と言われると不安になりますよね。
しかし、これは自社の工法を有利に見せるためのポジショントークの側面が強いと言わざるを得ません。
私たちが把握している限り、適切な施工が行われた埋め戻し工法で、駐車場が崩落するような大規模な地盤沈下が起きた公表事例は確認されていません。
もちろん、数年経って上部のアスファルトがわずかに沈んで水たまりができやすくなる程度のことは起こり得ますが、それは部分的な補修で十分対応可能なレベルの話です。
「危険」という言葉に過剰に反応せず、冷静に判断することが大切です。
本当に注意すべき「3つのリスク」
ただし、埋め戻し工法にも決して無視できない制約やリスクがあります。
1. 適用できるのは「屋外ピット」のみ
大量の砕石を投入するため、ピットの底にはすさまじい重さ(荷重)がかかります。
建物の1階部分やピロティ下など「建物と一体化している屋内ピット」で埋め戻しを行うと、その重みでマンションの基礎や構造に悪影響を与える恐れがあるため、原則として「屋外の独立したピット」でしか採用できません。
屋内ピットの場合の選択肢は、屋内・屋外どちらも対応。「鋼製平面化工法」の仕組みとメリットまたは建物の負担を減らす「EPS工法」。メリットと水害リスクの注意点をご参照ください。
2. 排水経路がなくなる問題
地下ピットには、雨水を逃がすための排水ポンプが設置されています。
ピットを埋めてしまうと、この排水機能が失われます。
大雨が降った際に敷地内に水が溢れないよう、地上部分で適切に水を逃がすための排水計画(表面排水や側溝の整備)をしっかり設計できる業者に依頼する必要があります。
3. 廃棄物処理法上の見解
ピットのコンクリート躯体を残したまま土砂で埋める行為が、「産業廃棄物の不法投棄(不適切な埋め立て)」に該当しないか、という法律上の議論があります。
一般的には問題ないと解釈されることが多いですが、自治体によって見解が異なる場合があります。
工事前に管轄の行政窓口に確認しておくことが重要です。
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「埋め戻しは危険」という言葉を鵜呑みにして、本当は安く済むはずだったのに高額な工法を選んでしまう管理組合は少なくありません。
業者の一方的な説明に惑わされないためには、複数の工法を客観的に比較することが不可欠です。
4工法の全体像については、地下ピット式の平面化「4つの工法」比較表と選び方の基本で整理しています。
(※自マンションの条件から最適な工法を絞り込みたい方は、平面化工法の判断フローチャート|屋外・屋内・予算・再設置から選ぶ最適解もご活用ください。)
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