マンションの「管理者」とは、区分所有法に定められた立場で、管理組合を代表して業務を執行する人や法人を指します。多くのマンションでは理事長がこの管理者を兼ねてきました。選任も解任も総会の決議によって決まる点が、この役割の出発点です。
「管理者」という言葉は、日常では管理員さんや管理会社を思い浮かべがちです。しかし法律上の管理者は、それとは別の明確な役割を持つ立場です。ここを混同すると、誰が何の責任を負うのかが見えにくくなります。
選任と解任は総会の決議による
管理者は、区分所有法に根拠を持つ役割です。建物や敷地、附属施設の管理を、区分所有者の集まりである管理組合を代表して行います。
その選任と解任の根拠が、区分所有法第25条です。第25条は、区分所有者が集会の決議によって管理者を選任し、また解任できると定めています。集会とは、実務でいう総会にあたります。
つまり管理者は、住民の総意である総会の決議で選ばれ、退いてもらうこともできる立場です。誰かが勝手に就いたり退いたりするものではありません。総会という手続きを通すことが前提になっています。
管理者は1人とは限らず、法人を管理者にすることもできます。個人の理事長を充てる場合もあれば、管理会社や外部の専門家を充てる場合もあります。どの形でも、選任と解任が総会の決議によるという基本は変わりません。
標準管理規約では理事長が兼ねる
これまで多くのマンションでは、理事長が管理者を兼ねる形が一般的でした。国土交通省が示すマンション標準管理規約が、理事長を区分所有法上の管理者とする立て付けを採っていることが背景にあります。
この従来の形では、住民から選ばれた理事長が、同時に法律上の管理者として組合を代表します。区分所有者である理事が運営の中心にいるため、住民の意向が反映されやすいという特徴があります。
一方で、なり手不足や高齢化を背景に、管理会社や外部の専門家が管理者を担う形も増えています。国土交通省の調査では、外部の専門家を活用するマンションは一定の割合に達しています。
理事長兼任型と外部管理者型では、管理者が誰かという点が違うだけで、区分所有法上の役割そのものは変わりません。権限と責任の枠組みは共通です。
管理者が持つ主な権限
管理者には、組合を回していくための一定の権限が与えられます。代表的なものを整理します。
- 共用部分の保存に必要な行為(軽微な修繕などの保存行為)
- 総会の決議や規約に基づく、共用部分の管理にあたる行為
- 管理に必要な範囲での契約の締結
- 管理組合を代表して行う対外的な行為
これらの権限は、管理者が自由に何でも決められるという意味ではありません。多くの重要な事項は、総会の決議や規約の定めに従って進めることが前提です。管理者は、その決議や規約の枠の中で組合を動かす立場だと考えると分かりやすいです。
日常的な管理の範囲を超える大きな支出や、規約で総会決議が求められる事項は、勝手に決めることはできません。権限の範囲がどこまでかは、規約と委託契約で具体的に決まります。
管理者が負う責任
権限がある分、管理者には責任も伴います。管理者は組合の財産や共用部分を預かる立場なので、その立場の人として通常期待される注意をもって職務にあたる義務があります。職務の状況を区分所有者に報告する義務もあります。
近年は、この責任を制度面から補強する動きが続いています。2025年に約20年ぶりに改正された区分所有法では、管理者をめぐる規定が見直されました。
その一つが利益相反への対応です。管理会社が管理者となり、その管理会社自身が工事を発注するような場面では、組合の利益と管理者の利益がぶつかるおそれがあります。改正区分所有法では、こうした利益相反取引について、管理者があらかじめ説明することを義務づけました。
管理者が組合と利益のぶつかる取引を行う場合は、事前の説明が求められます。総会や監事による確認を通し、内容を住民が把握できる状態にしておくことが大切です。
この事前説明の義務は、管理者の責任を住民が監督しやすくするための仕組みです。管理会社が管理者を担う形が広がる中で、チェックの実効性を高める狙いがあります。
なお、改正区分所有法は複数の法律をまとめた内容で、施行の時期は部分ごとに異なります。すべてが同時に始まるわけではない点に注意してください。
まとめ
管理者は、区分所有法に根拠を持つ管理組合の代表者です。区分所有法第25条により、その選任と解任は総会の決議によると定められています。標準管理規約では理事長がこの役割を兼ねる形が一般的でした。
管理者には共用部分の管理や契約などの権限がある一方、相応の注意をもって職務を行い、住民に報告する責任を負います。近年の制度改正では、管理会社が管理者として工事を発注する際の利益相反取引に、事前の説明が義務づけられました。誰が管理者であっても、総会の決議と監督を通して住民が関与できる状態を保つことが、健全な運営の土台になります。
