区分所有法は2025年(令和7年)に約20年ぶりの改正を受けました。総会決議の基準の見直しや、所在不明の区分所有者への対応など、管理者管理方式の運用に関わる変更が含まれます。本稿では、その内容が理事の判断にどう関わるかを整理します。
結論を先に示します。今回の改正は、管理者管理方式そのものを義務づけるものではありません。ただし、決議のしやすさや管理者の監督に関わる点で、検討の前提となる環境が変わります。
改正は複数の法律をまとめた束ね法のため、施行日が部分ごとに異なります。「すべて2026年4月に施行される」という理解は正確ではありません。最新の施行内容は、国土交通省や法務省の公表資料で確認してください。
改正の全体像と施行の時期
2025年(令和7年)に成立した改正は、令和7年法律第47号として公布されました。このうち区分所有法の部分は、2026年4月1日に施行される見込みです。
注意したいのは、束ね法という形式です。区分所有法以外の改正も同じ法律に含まれており、施行のタイミングがそろっているとは限りません。
- 区分所有法部分の施行は2026年4月1日が基準
- ただし他の部分は施行日が異なる場合がある
- 規約変更や運用開始の前に、最新の施行状況を確認する
施行日が分かれている以上、改正されたから今すぐ全部使える、とは考えないほうが安全です。
総会決議の基準の見直し
今回の改正で柱の一つとされるのが、総会決議の数え方の見直しです。これまでは欠席が事実上の反対票として働き、決議が成立しにくい状況がありました。
改正では、決議を「出席した区分所有者の議決権」を基準とする方式に見直されます。欠席が結論を左右しにくくなり、議事を前に進めやすくなる方向の変更です。
管理者管理方式への移行は、規約変更や委託契約の承認を総会で諮る場面が多くなります。決議が成立しやすくなることは、検討を進める側にとって追い風になり得ます。
ただし、特別決議の定足数の有無や、建替え決議に必要な賛成割合の具体的な数値は、資料により説明が分かれます。本稿では具体数値を断定しません。規約変更の特別決議が4分の3以上である点だけを前提として扱い、その他の数値は一次情報で確認してください。
所在不明区分所有者と管理人制度
高経年のマンションでは、連絡が取れない区分所有者が決議の妨げになる問題があります。母数に数えられたまま欠席が続くと、合意形成が止まりやすくなります。
改正では、所在不明の区分所有者を決議の母数から除外する仕組みが設けられます。連絡の取れない区分所有者がいても、議事を進めやすくする狙いです。
あわせて、管理不全や所有者不明の状態に対応するための管理人制度が新設されます。管理が行き届かない区分所有建物への対応手段が広がる方向の変更です。
- 所在不明区分所有者を決議の母数から除外できる
- 管理不全・所有者不明への管理人制度を新設
- いずれも合意形成の停滞をほぐすことを意図している
これらは管理者管理方式に固有の変更ではありませんが、管理組合の意思決定全体を支える基盤になります。
利益相反取引の事前説明の義務化
管理者管理方式、とくに管理会社が管理者を務める方式では、利益相反が中心的な論点になります。管理者である管理会社が、自社や関連会社に工事を発注し得るためです。
改正では、管理者が利益相反に当たる取引を行う場面で、事前の説明を義務づける方向の見直しが含まれます。工事の発注などで、管理者が判断の前に説明を尽くす必要が出てきます。
この変更は、監督・チェックの仕組みと組み合わせて意味を持ちます。説明義務だけで利益相反が消えるわけではありません。
- 管理者が利益相反取引をする際は事前説明が求められる
- 監事による監督や外部監査と組み合わせて機能する
- 説明を受ける側(区分所有者・監事)の確認姿勢も問われる
管理者管理方式を選ぶなら、説明義務を委託契約や規約の監督条項とあわせて設計する視点が必要です。利益相反は説明と監督の両輪で抑える論点だと押さえてください。
関連する規約・ガイドラインの整備
法改正の前後で、運用の土台となる文書も見直されています。国土交通省は2024年6月に外部管理者方式等に関するガイドラインへ改訂し、管理会社が管理者になる方式を対象に加えました。2026年4月にも再改訂が予定されています。
マンション標準管理規約も2025年に改正され、委託契約の標準的な様式の整備も進められています。法律本体だけでなく、規約やガイドラインも合わせて確認することが、実務では重要になります。
| 区分 | 動き |
|---|---|
| 法律 | 区分所有法改正(区分所有法部分は2026年4月1日施行) |
| ガイドライン | 外部管理者方式等のガイドラインを改訂・再改訂 |
| 規約 | 標準管理規約の改正・委託契約様式の整備 |
最新の内容は時期によって更新されます。検討の際は、その時点の一次情報を確認する前提で進めてください。
まとめ
今回の改正は、管理者管理方式を直接強制するものではありません。総会決議の基準の見直し、所在不明区分所有者の母数からの除外、管理人制度、そして利益相反取引の事前説明の義務化が柱です。いずれも、管理者管理方式を検討・運用するうえでの環境を整える変更といえます。一方で、束ね法のため施行日は部分ごとに異なり、定足数や建替えの賛成割合といった数値は資料で食い違います。具体的な手続きを進める前に、その時点の施行内容と一次情報を必ず確認してください。
