これまでマンション管理(=管理組合運営)は、役員が貴重なプライベートの時間を削って熱心に取り組むことが理想とされてきました。しかし、アフターコロナの流れの中で、マンション管理にも効率化が必要な時代が訪れています。そこで、これからの管理組合運営の方法を、当サイトでは「マンション管理(=管理組合運営)は、80点主義がいい」を合言葉に、「最小限の労力や費用で最大限の成果を得る」ための管理組合運営の方法について考えていきます。
マンション管理の「80点主義」とはどういうもの?
マンション管理(=管理組合運営)で『80点主義』というと「手抜き」「不真面目」といったマイナスイメージを持つかもしれません。しかし、マンション管理における『80点主義』には「労力・コスト削減」のためのノウハウが詰まっています。
たとえば学生時代の部活動で、顧問の先生から「結果を出すために全力で打ち込め!」と言われ、そのとおり全力で物事に取り組んだけれど、結局は努力に見合う成果が得られなかった経験はありませんか?
経験則で理解できるように「80点まで」はある程度の努力で到達できても「100点満点」を達成するためにはその何倍もの時間を費やさなくてはなりません。これは学業だけではなくビジネスの世界でも耳にする言葉です。
管理組合運営で100点を取る必要がない理由とは?
自分たちの暮らす住まいのことなのだから100点を目指すのが当然という考え方もあるでしょう。しかし『80点主義』は、決して怠けるための考え方ではなく「労力削減」「コスト削減」の効果を生むための合理的な方法です。
理由1 理事会の役員は忙しい
理事会の役員は順番で選任され、本業の忙しい仕事を抱えながらボランティアとして活動をおこなっています。したがって、役員の活動は誰しもが許容できる労力の範囲内でおこなえることが重要です。
理由2 全員にとっての100点満点はない
管理組合運営に点数をつけるジャッジマンは、たくさんいる組合員や住人です。その評価基準は曖昧で全員が満点を出すことはあり得ません。かなわない目標に対して全力で取り組む必要はありません。
住人全員が満足するような事はありえない
理由2の「全員にとっての100点満点はない」を補足すると、マンションで暮らす住人によって価値観が違い、物事の受け止め方や考え方は異なります。仮に、役員が寝る間を惜しんで全力で取り組んだ議案であっても、総会で否決された上に他の組合員からは不満の声があがるといった事はよくある話です。
完璧を目指すことで管理組合のバランスが乱れる
役員が自分の仕事に対して完璧主義に陥ると俯瞰的に物事をとらえられなくなります。こうなると、管理組合が抱える本質的な課題や問題の発見が遅れて必要な対処が抜け落ちてしまいがちです。
例えば、ゴミ置場の扉が壊れて、管理会社から理事会に修繕費用として5万円の見積りが提出された。完璧主義の理事のひとりがそれでは高すぎると意見し、相見積りを取ることになった。相見積りを取得した後は、見積りの比較表をつくって半年間検討を続けた。
こうした取り組みは決して間違いではありませんが、住人にしてみれば、いつまでも扉の修理がおこなわれず不便を強いられる結果になります。仮に、修繕費用の2万円が節約できたとしても、修理が遅れたことで「今期の理事会は仕事をおこなっていない!」といった不満につながってしまいます。
理事会の活動は「ほどほど」で上手くいく
理事会は、役員が忙しい仕事の合間に活動をおこなうので効率の良さが求められます。完璧主義の方は、理事会での活動でも完璧を目指しがちです。そして、自分だけではなく他の役員にも完璧を求めて、仕事をしない役員を糾弾するといった問題を起こしがちです。
また、完璧主義の方が責任感から長期間任期を務めることで、偏った閉鎖的な理事会運営に陥る危険性があります。結果、管理組合内で煙たい存在になってしまうこともあるでしょう。
80点主義の実践にはルールづくりが欠かせない
マンション管理(=管理組合運営)で80点主義を実践するには、管理組合としてのルールづくりが欠かせません。80点主義を成功させるための基本は誰でも無理がなく実践できるルールを策定することです。輪番で毎年交代する不慣れな役員であっても実施できることが条件です。
- 30万円以上の工事は必ず相見積りを取得する
- 長期修繕計画と修繕積立金の見直しを5年毎におこなう
- 大規模修繕工事の前には修繕委員会を結成する
- 管理組合の理事は輪番で平等に就任する
- マンション管理士を顧問として採用する
- 理事会はオンラインでの出席も可能とする
この記事のまとめ
これを、当サイトでは「マンション管理(=管理組合運営)の80点主義」と名付けました。この80点主義は、理事会の役員の負担を抑えるということに主眼をおいているのがポイントになります。
役員の負担を最小限に抑えた上で、将来的に管理の崩壊といった事態にならないように最低限必要となる効率的なルールを定めることが「80点主義」の実践では重要になります。